イラスト 一覧 - コピック公式サイト https://copic.jp/interview_cat/illustration/ コピックは、Tooグループが開発したアルコールマーカーをはじめとする画材ブランドです。 イラスト、アート、デザイン、クラフトなど幅広い分野で活用されており、 現在は70ヶ国を超える世界各国で多くの方に愛用されています。 Fri, 22 Mar 2024 08:59:51 +0000 ja hourly 1 香琳 https://copic.jp/interview/karin/ Fri, 19 Jan 2024 08:00:00 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=25211 香琳 Karin大阪在住アナログ絵描きコピックを始めとした「アルコールマーカー」で作品を制作し、SNSや展示をメインに創作活動を行っている。和や縁起物、童話をモチーフとして取り入れた作品を多く描く。Twitter(X): […]

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香琳 Karin
大阪在住アナログ絵描き
コピックを始めとした「アルコールマーカー」で作品を制作し、SNSや展示をメインに創作活動を行っている。
和や縁起物、童話をモチーフとして取り入れた作品を多く描く。
Twitter(X):@11karin23
instagram:@11karin23

イベント会場でのライブドローイング、イラスト雑誌での手元メイキング等幅広く活躍されているイラストレーター・香琳さん。コピックギフトセットとして数量限定発売したコピック ブースターボックスでは初心者の方向けにオリジナルでコピックイラストを描き下ろしいただきました。今回のインタビューでは香琳さんについて、香琳さんのイラストについて色々とお話を伺いました。

小中学生の頃だったと思うのですが、イラスト投稿誌「SS(スモールエス)」を読み始めたことでイラストレーターという職業を知り、なりたいと思うようになりました。
初めてイラストのお仕事をいただいたのは高校生の頃、SS(スモールエス)編集部からのご依頼でした。
投稿したイラストが誌面に掲載されたことがきっかけです。

幼少期から絵を描くことが好きだったので、沢山描き続けていたことが技術の向上に少しは繋がったのかもしれません。
色塗りに関する技術面だと、コピックを使い始めた当初から慣れるまでの間は技法書やpixivに投稿されているメイキングを見て練習していました。


くるみ割り人形を題材とした作品。
落ち着いたトーンの中に鮮やかな赤が引き立っています。
人物だけでなく、和にちなんだモチーフも良く描かれる香琳さん。

小学生の頃だったと思うのですが、立ち寄った画材屋で母がコピックを数本買ってくれたことが使い始めたきっかけです。
それからは貯めたお小遣いやお年玉で少しずつ買い足し、コピックを集めていきました。
色数が少ないときは重ね塗りすることで同じ色でも濃淡が出せることに気づいたり、色数が増えてきた頃にはグラデーションを作りやすくなったことに嬉しくなったり、コピックと出会ってからイラストを描くことがグッと楽しくなったことを覚えています。

ー香琳さんがよく使う色を教えてください。

BV20・BV23
V20・V22
E04・E70・E71
BG72
彩度が低めで落ち着いた色味が好きです。絵に取り入れやすく、鮮やかな色を引き立てることも出来て便利です。

デスクの上に収納されているコピック。
コピック バリオスインク(現・コピックインク)もご愛用いただいています。

ーコピック以外に、コピック周辺商品で愛用しているものはありますか。

線画を描くとき主線にはコピックマルチライナー 0.05mm セピアを使用しています。
セピア以外にもラベンダーやワインなど、線画の部分毎に使い分けています。
そして最近はコピック画箋筆が自分の中でブームです。筆ペンながらコピックと併用してもにじまないところが魅力的で、イラストによく取り入れています。

ーコピックの良いところを教えてください。

1番に思い浮かぶのは速乾性です。
私は色塗りのとき紙が乾くのを待たずに次々色を置いていきたいせっかちなので、コピックの速乾性にはいつも助けられています。

『おとぎ話の少女たち』 コピック/アクリルガッシュ
マルマンスケッチブックにコピック着彩し、揺らぎのある雰囲気に。
紙の素材感も引き立っています。


描きたいテーマを決めて、そこからテーマに沿った資料を探したりラフを沢山描いてじっくりイメージを固めていくことが多いです。何かを見て突然アイデアがくっきりと思い浮かぶ、ということは少ないです。

レッスンブックを見ながら同じように塗ってみるも良し、自分の思うがままに塗るも良し、感性のままに色塗りを楽しんでいただけたら幸いです!

コピック ブースターボックス 香琳
『遊園地』をテーマに、コピック初心者の方も楽しく塗りやすいシンプルな色使いで女の子を描き下ろしいただきました。
制服の等身大ver.と…
コピック ブースターボックス 香琳
ウェイター ミニキャラver.で
異なる雰囲気に仕上げていただきました!


コピックブースターボックス用ビジュアルは比較的シンプルな塗り・線画だった分、個人的な描き下ろしイラストでは小物を散りばめたり衣装の装飾を増やしたり密度を意識しました。

使用しているのは コピック ブースターボックスに入っている20色!
線画にもコピックマルチライナー 0.05mm セピア0.1mm ブラック
ご使用いただいています。
線画を強調したくない服の柄などはシャーペンで描かれているとのことです。


ブースターボックス カラー
着彩に使っている20色リスト


丁寧に心を込めて描き上げた絵はきっと誰かの琴線に触れると思っています。ぜひ投稿誌やSNSへ投稿してみたり、絵を見てもらう機会を作ってみてください。
私もまだまだ努力しなければいけない身なので、魅力的な絵が描けるようにもっと頑張っていきたいです。

ー香琳さん、インタビューありがとうございました!
 ぜひ皆さんも香琳さんの線画を塗ってみてください★
 

コピック ブースターボックスの発売を記念してどなたでも参加ができる #コピックミニイラコン を開催中!
『遊園地』をテーマに、下記どちらかでエントリーしてみてください。
コピック ブースターボックス ぬり絵 部門
フリーイラスト部門

コンテスト詳細はこちらをご覧ください。

コピックミニイラコン

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sushidog https://copic.jp/interview/illustration/sushidog/ Tue, 26 Dec 2023 01:08:52 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=25159 投稿 sushidogコピック公式サイト に最初に表示されました。

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星野桂 https://copic.jp/interview/hoshinokatsura/ Fri, 01 Dec 2023 01:00:00 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=24925 星野 桂 KATSURA HOSHINO1980年滋賀生まれ。アニメーター業に就いたのち、2002年集英社より『ZONE』でデビュー。2004年、「週刊少年ジャンプ」誌上にて、『D.Gray-man』の連載を開始し、20 […]

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星野 桂 KATSURA HOSHINO
1980年滋賀生まれ。アニメーター業に就いたのち、2002年集英社より『ZONE』でデビュー。2004年、「週刊少年ジャンプ」誌上にて、『D.Gray-man』の連載を開始し、2006年と2016年にはTVアニメ化、2007年と2008年にはゲーム化。コミックスは現在、28巻まで発行され、累計2400万部を超える人気を博している。現在は「ジャンプSQ.RISE」にて本作を連載中。
instagram:@katsura_5600


コピックアワード2023で審査員を務めていただいた漫画家・星野桂先生。ご自宅にはコピック全358色のほか、コピックシリーズ周辺商品まで揃えていただいており、現在では主に趣味の創作活動にコピックをご愛用いただいています。そんな星野先生に今回は特別に愛猫のチョロちゃんを描き下ろしいただきながら、先生について、コピックについてさらにお話を伺いました。


ーコピックアワード2023では審査員を務めていただきありがとうございました。
 改めて先生について、先生が漫画家を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

実は私、漫画家を目指してたわけではないんです。ある漫画編集部で編集アシスタントのアルバイトしていたことがあったのですが、編集部の人が先生のもとへ原稿取りに行くのに命を削っているのを見て、 この仕事は恐ろしいな、絶対嫌だと思っていました。
当時はアルバイトをしつつ、絵本作家を目指して持ち込みにも行ってたんですが、全く引っかからなくて。そんな時、(今はある漫画編集部の編集長の)友人に「漫画を描きなよ」って言われていました。それから1年ぐらい経った時に、 絵本の活動も全然パッとしないし一旦東京を離れて京都で姉と住んでた頃、9.11のテロの様子がテレビで流れて。当時は家事もせず、ただ寝てるだけの生活だったんですが、そのニュースを見た時にすごく駆られるものがあって…それで漫画を描き始めたんです。
で、その漫画を描いている途中で、この漫画を編集部に持ち込んでどこにも引っかからなかったら絵を趣味にしようと決めました。約束の当日になり、漫画を描きあげられてなかったけど、持ち込みに行ったのが有名な週刊少年ジャンプの編集部でした。そしたら、全く出来上がってない鉛筆原稿だったのに担当になってくださって。そこから、これからもネームを見せてください、東京にもまた上京してください…となって、今に至ります。

夕方の18時の約束だったんですけど、京都に住んでいたので15時ぐらいには新幹線乗らなきゃいけない。けれども原稿はできてないから嫌になって編集部に連絡もせず家でパジャマで寝ていました。※当時のお話です
19時過ぎぐらいになって、姉が仕事から帰ってきて「なんでまだ家にいるの」って怒られて、出来上がっていない原稿を姉がファイルに詰めて、パジャマ姿のままの私は引きずられて駅まで連れてこられ、新幹線に押し込まれて編集部に向かいました。
ラストシーンまで鉛筆状態の未完成原稿でしたが、編集の方は私が描いたものを面白いって言ってくださり、そこから、自分が描いたものにアドバイスをくれる人がいると思ったら楽しくて。
そこからは描いたら見せてを繰り返し、 気が付いたら読み切りに出そう、連載会議に出そうってなって、途中で「私って漫画家になりたかったんだっけ」って思ったのですが、もう決まっちゃったからやらないとと思ってやり始めて、 10週で終わるだろう、打ち切りになるだろうって思っていたけれど終わらなかったんです。
その時に、「私、漫画家になんなきゃいけないの」って、覚悟を決めました。そこからは地獄でした(笑)

愛猫チョロちゃんをコピックで描いている様子。
薄い色で下描きをしながらどんどん色を重ねていきます。

ーまるで漫画のようです…ありがとうございます。
 過去から現在に至るまでのお仕事の作画環境についてもお聞かせください。

2010年頃まではアナログでカラー原稿を描いていました。当時はコピックのことが大好きで使っていたというより、小畑健先生がコピック使われてるのを知って、みんな使ってるコピックを使えばそれっぽい絵が描けると思って、、締め切りに間に合わせることだけを必死に考えて楽しいとか感じることなくとにかく塗り続けてただけだったんです。
そこから3.11があって、アシスタントさんが来れない、 在宅に切り替えるしかないってなって、一気に自分の作品をカラー・モノクロ原稿ともにデジタル作画に切り替えました。その当時は「塗りのやり直しができるのがすごい!」って思っていたのですが、デジタルに移行してからしばらくして、これまでしばらく離れていた アナログの文房具や画材の方に目が行くようになって。そこからちょっとずつ、趣味として文房具や画材を揃えていきました。

ー最近になって改めてコピックをたくさんご愛用いただいていると伺いました。

コピックはもうしばらく常に机の傍らにはあったんですけど、もう古い付き合いみたいな感じなので、新しい画材っていう感覚がなかったんです。それが、この間のコピックアワード2023で、全く知らない技法を皆さんの作品から知って、それでもう頬をぶたれた気持ちで。コピックのことはもう十分わかってると思ってた自分を殴ってやりたくなって(笑)
コピックって、好きな色をパっと見つけてパって取ってすぐに塗ることができるところが好きです。このスピードは、すごく私に性に合ってるってことが改めてわかりました。最近は朝起きたときにスレッズ(instagram)に「おはよう。今日もコピックコピック〜」と書き込むほど、今コピックが好きです。
仕事から離れて、趣味としてコピックで好きに描いたら楽しかったんです。今はインスタでコピック好きな仲間を増やすみたいな活動をしています。
自分のデジタルの絵より、アナログの描いた絵の方がすごく好きなんです。デジタルは納得いくまでできますけど、 アナログのこの一発勝負感・ライブ感といいますか、心が乗るのでやっぱり念がこもるんです。デジタルの戻るボタンって画期的だけど、戻れないアナログの絵の緊張感っていうものにまたクリエイターさんたちは戻り始めてるんじゃないかなって、最近SNSを見てると思います。いつかまたDグレでカラー原稿やりたいなと思っています。

ーよく使うコピックの色はありますか?

写真に写っているカラーをよく使います。薄い色でアタリを取ってから描いていきます。
今はコピックの優しい色だけでどうやって成立させるかを研究してて、大久保つぐみさんのような"揺らぎ"をコピックで表現したいと思っています。今まで(仕事では)コピックでパキッとしたイラストを描き続けてきたので、パキッとしてないコピックっていうのをやりたいってなりました。
コピックどうやって使えばいいですかっていう方にも、とりあえず薄い色から塗っていくのを私は推奨してます。

私は色鉛筆で合わせるのが好きですね。コピックで着彩した上から色鉛筆の色を乗せた時に、すごくパキっと綺麗に色が乗って 、いかにも別の画材を合わせたっていう感じがせずに馴染むんです。
色鉛筆はファーバーカステルのポリクロモスが私は1番合うなと…いろんなメーカーのものを買い漁ってたくさん試してみたんですけど、これが1番コピックに合うと思ってました。

先生ご愛用のコピック、コピックポシェット、色鉛筆をご持参いただきました。
コピックの上から色鉛筆で塗るミクストメディアをよく楽しまれている様子。
虹の橋に渡った猫たちを守る、先生のオリジナルキャラクター・虹子ちゃん。
よく愛用されているコピックの色。

先生はコピックだけでなく他の画材についてもお詳しいですよね。
 新しい商品についてはどのように調べて、どこで買われますか。

コピックと相性のいい紙をブログにあげてくださってる方の情報を見たりして、見つけたらすぐamazonで注文しています。家に商品が届いたら、ご飯食べた後に試して…また寝る前に試して…と楽しんでいます。
とりあえず心が荒れるとamazonで画材を見るんです。海外のなかなか見かけたことがない変な画材とかがたまにちょろっと出てくるので、知らないぞと思ったらとりあえず試して買える。朝起きたらとりあえずいつもネットサーフィンします。そうやって調べてるとamazonが気を利かして、なんか面白いのあるよって提案してくれます。

死ぬほどチョロの顔見ながら、どこがチャームポイントなんだろうと思いながら描きました。私は写実的な絵が好きじゃなくて、いかにも絵に起こしたっていう絵が好きなんです。なので、絵には絵らしいものがないとなって思っちゃう。そのままの通りに描かずに、ちょっと自分の入れたい世界観を混ぜながら描くっていうのが好きです。
綺麗な色で終わらせるだけでなく、濁色が出るのが好きなので、綺麗なチョロの色だけを目立たせて、ちょっと濁らせるとかするのがちょっと好きだったりもします。コピックって、すごく発色がいいし、色は全部綺麗じゃないですか。だから、ちょっと彩度を落とすみたいなことをした方がなんか自分はやりやすいです。
アナログってデジタルと違って、終わりを決めるのも1つの醍醐味ですよね!

描き下ろしいただいたチョロちゃん。
コピックを手に持つ虹子ちゃんを素敵に描き下ろしいただきました

ぜひコピックメイキング動画もご覧ください。


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黒田潔 https://copic.jp/interview/kurodakiyoshi/ Mon, 28 Aug 2023 09:22:53 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=24130 黒田 潔(くろだ きよし)1975年東京生まれ。多摩美術大学大学院修了。 2003年よりフリーのイラストレーターとして、動植物を中心にしたモノクロの線画を軸に、広告や壁画など多方面で活動。 作家活動も行い、バルセロナのア […]

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黒田 潔(くろだ きよし)
1975年東京生まれ。多摩美術大学大学院修了。 2003年よりフリーのイラストレーターとして、動植物を中心にしたモノクロの線画を軸に、広告や壁画など多方面で活動。 作家活動も行い、バルセロナのアートプロジェクト“Place”への参加や、神田明神の天井画などを手掛け、 東京都現代美術館、ナムジュン・パイク・アートセンター等国内外の展覧会に参加。 ニューヨークADC賞ブロンズ受賞、CS DESIGN AWARD、他多数受賞。 作品集に「森へ」(2010 / ピエ・ブックス)、「Water」(2015 / POST) などがある。
Website:http://www.kiyoshikuroda.jp
Instagram:https://www.instagram.com/k_u_r_o_d_a/



モノクロの繊細な線画を軸に、装丁画から巨大なウォールグラフィックまで多彩な表現活動をされているイラストレーターの黒田潔さん。
さまざまな画材・道具を使用されていますが、このたび新たな表現の模索のためにコピックをお試しいただきました。


ーこれまでの経歴についてお聞かせください。

大学院では、グラフィックデザインを学びながら、課題以外にもイラストレーションを描いて発表していました。学生だった頃の90年代は、多くの公募からスターが生まれている時代だったので、自分もそのチャンスを狙って、沢山のコンペに応募しました。もともと広告に使われているイラストレーションにとても興味があったので、デザイン事務所で3年程デザイナーとして仕事をした後に、イラストレーターとして独立しました。
イラストレーターとしてスタートしてから、今年で20年目になるのですが、広告や壁面グラフィック、ファッションやCDジャケットなど様々なお仕事をさせて頂きました。

ーどのようなきっかけで動植物や自然をメインのモチーフとされる様になったのでしょうか?

イラストレーターとしての再スタートとして、植物と昆虫をメインとしたテーマの作品を表参道のROCKETで発表しました。最初の作品イメージから「植物」のイメージが定着して、デザイナーやアーティスト達との人脈が広がりました。デザイナー時代に担当した平井堅さんのCDジャケットに植物の線画を描いたのも良い転機となりました。

ご自身の表現活動に強い影響を受けた「もの・ひと・こと」はありますか?

学生の頃に好きだった画家やデザイナーは沢山いるのですが、デザイン事務所に入った頃、資料探しで立ち寄った洋書屋で眺めていた、VOGUEやDAZEDといったファッション誌に載っていたイラストレーションがとても魅力的でインパクトがあり、影響を受けた気がします。


クライアントワークと作家活動、それぞれどのように向き合い制作を行なっていますか?

言葉で表せない事を絵で表現することと、描きたいと思った衝動を何かしらのかたちで表現して相手に伝えられるようにすることを心がけて制作しています。
クライアントワークでは、相手が求めているものを出来るだけかたちにする努力をしています。

ー今回、マルチライナーからコピックスケッチ、インクまで色々試していただきました。それぞれはじめて使われた印象を教えてください

普段はモノクロの筆ペンで描く事が多いのですが、マルチライナーの太さの違うペン先は、初めての感覚や発見が多くとても刺激的でした。
今までは、線を美しく描く事を第一に心がけていましたが、線の勢いや密度のある線画の中から生まれるタッチなど、今までの線画をどう崩して変化させていけるのか、とても実験的な制作が出来ました。コピックスケッチは、色による印象の変化や柔らかなタッチなど、まだまだ試作中ですが、とても楽しみながら制作が出来ています。

コピックスケッチ、インク、マルチライナーを使った試作の数々

ーお気に入りの製品や新たな表現方法は見つかりましたでしょうか?

マルチライナーのブラシタイプは、筆の筆圧が残りながら滑らかな線が描けるので、とても使い心地が良かったです。ひとつの絵の中にブラシタイプと細いタイプを同時に使う事で、線の勢いやカスレなど、偶発的な表現も取り入れる事が出来たのは、新たな発見でした。鉛筆のラフの印象の中にある線の自由な動きは、タイプの違ったペンを使用することで、ラフのテンションをそのままキープして表現出来た気がします。

使用画材:コピックマルチライナーBM/0,5mm/0,03mm
使用画材:コピックマルチライナーBS

ー普段どのような画材を愛用されていますか?

鉛筆、水彩ペン、筆ペン、アクリル絵具が中心です。
クライアントワークでは、デジタルツールを使用しての制作が中心でしたが、用途や媒体によってアナログの作品で納品する機会も増えてきました。展覧会で発表する作品は、その時のテーマやコンセプトによってアナログとデジタルツールを使い分けています。

ー黒田さんは教鞭もとられていますよね、授業の中で大切にされていることを教えてください。

イラストレーションの指導は今でもなかなか答えが見つけられず日々苦戦しているのですが、学生には、ひとつの方法論に拘らず、自分の作品を良い意味で壊す位の実験的な挑戦を繰り返す気持ちを持つことと、時間をかけて制作するという自分の限界値を知ることも学生の内に出来る大切な事だと思って指導しています。

ーその上で画材を使って表現活動を楽しんでいる方にメッセージがあればお願いします。

自分に合う画材と出会うことの喜びはとても楽しく幸せなことです。
求めている表現にぴったり合う画材をどんどんと見つけていくべきだと思います。

ー現在注力していること、この先挑戦したいことはありますか?

アニメーションの表現に興味があるので、挑戦したいと思っています。

ー最後に、コピック作品も展示予定の展覧会について教えてください

8/17~9/12(※会期延長となりました!)まで新宿ビームスの5FにあるB GALLERYで個展「花と実」を開催しています。
コピックを使用した作品を普段、SNSで発表しているのですが、その中からいくつかの原画を展示しています。コピックで描いた原画をもとに制作した立体作品も展示しているので、素材の違った作品を是非、見比べて頂きたいです。

黒田潔個展「花と実」
会場:ビームス ジャパン(新宿)5F 『 B GALLERY』
8/17(木) - 9/12(火) ※会期延長となりました!
11:00~20:00
入場無料

ー黒田さんありがとうございました!今回、期間限定でマルチライナーを使用して描き下ろしていただいだぬりえをご提供いただきました。ぜひマルチライナーのブラシタイプを使って、主線のなぞり書きにも挑戦してみてください!

※ぬりえの配布期間は終了いたしました。

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田村大 https://copic.jp/interview/tamuradai/ Mon, 16 Jan 2023 00:34:41 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=22534 田村 大(たむら だい)2016年に似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会において総合優勝した後に独立。躍動感あふれるスタイルを最も得意とし、著名人からも高い評価を受けている。Instagramアカウントのフ […]

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田村 大(たむら だい)
2016年に似顔絵の世界大会であるISCAカリカチュア世界大会において総合優勝した後に独立。躍動感あふれるスタイルを最も得意とし、著名人からも高い評価を受けている。Instagramアカウントのフォロワーは10万人を越え、NBAからの密着取材やNHKやTBSでも取り上げられるなど注目度も高まっている。アートの分野でも、新たな挑戦を続けながら着実に実績を積んでいる。
https://dt-ltd.tokyo


スポーツメーカーのデザイナーから似顔絵アーティストというキャリアを経て、現在はフリーのイラストアーティストとして活躍する田村大さん。長年積み上げてきた確かな画力と、強いリスペクトが反映されたアスリートのイラスト等が高い評価を受け、コラボレーションやメディアへの起用など多数の実績を持ち、2021年には初の画集の発売と共に個展を開催するなど年々活動の幅を広げています。
そんな田村さんの作品制作に欠かせないという画材がコピックスケッチ。長年のコピック愛用者として、ユーザーインタビューにお答えいただきました。

食品メーカーの広告のために描いた錦織圭選手のイラスト
日本フェンシング協会 公式コラボレーションイラスト

ー現在はイラストアーティストとして活躍されている田村さんですが、これまでに様々なキャリアを積まれているとお聞きしています。アーティストとして至るまでの経歴を教えてください。

絵を描くことは小さい頃から好きでしたが、バスケットボールも大好きで高校も大学もバスケ部に所属していて部活を中心に活動していたので、本格的に描くとかではなく授業中に絵を描いて楽しむようなタイプでした。
大学3年の就活の時期になって、自分はまたこれからも仕事の合間に絵を描くのかなと思ったら、漠然とそれは嫌だなと思って、専門的に絵やデザインを学んでそれを仕事にしたいって考えたんです。そこでデザインの専門学校に入学するために、大学やバイトを続けながらアトリエに通って受験のための勉強を始めました。それまで絵の勉強をしたこともなかったし、補欠合格でしたがなんとか入学することができて、23歳から専門学校でデザインを学び始めました。

ー専門学校ではどんなことを学ばれたのですか?

専門学校の1年生の時はオールジャンルを勉強して、2年生からはビジュアルデザインコースに進みました。変わらず絵を描きたかったんですけど、やっぱりデザインを学ぶ場なので、絵を描いていると変な目で見られるんですよね。就活を考えると絵を描いて生活するのは難しいというのがわかってきて、専門学校では広告デザインをしっかり学びました。
その甲斐とご縁もあってバスケ用品のメーカーにデザイナーとして就職することができました。好きなバスケに関わりながらチームのロゴを制作したりユニフォームのデザインを担当させていただいたりしました。

― 大好きなバスケットボールに関わりながらのデザイン業務は充実していたと思います。そこから絵の仕事に切り替えた転機は何だったのでしょうか。

メーカーのデザイナーとして働く日々のなか、ある時「田村さんは絵も得意だから(商品として)似顔絵Tシャツを描いてくれないか」って頼まれたことがあったんです。それで描いてみたのはいいんですが、評判は良かったけど自分的には全然納得いかない出来で。ちゃんと似顔絵を学んでみたいと思って調べたら、似顔絵専門会社が開催しているプロ養成コースの似顔絵講座があったのでそこに通うことにしました。


― お仕事をしながら更にスクールに通うことに迷いはなかったのですか?

そうですね、気軽に学べるコースもありましたけどやるならプロ養成コースだと思いましたし、全然迷いはなかったです。大好きなバスケも週末の趣味として続けてはいましたが、24歳の時に足を怪我をしてしまったのもあって、これを前向きにデザインや絵に専念するきっかけとして捉えました。そしてプロ養成コースで似顔絵の面白さと難しさを知って、このまま会社員として働き続けるなら、絵を描くっていう好きなこと自体を仕事にできたほうがいいんじゃないかって思いがあり、デザイナーを辞めて似顔絵の道に進むことにしました。

ー 似顔絵業界での活躍を経て、個人のアーティストとして独立されたんですよね。似顔絵を極めたいと思った時にはすでに独立することも視野に入れていたのでしょうか。

具体的にではないですけど、ある程度はしていました。似顔絵の世界大会があると知って、社内で入社3年目に出場できた先輩がいたので自分も必ず3年以内に出場して、その大会で優勝するということを目標としていました。

ー似顔絵の世界大会優勝というのも並大抵の努力では達成できないことと思います。目標の達成に向けてどのように取り組まれていましたか。

目標通り、入社して3年目に世界大会に初出場をすることは出来ました。でもその年はあまりいい成績が取れなくて、2015年に2回目の出場メンバーに選んでいただいた時も総合4位という結果だったんです。すごく悔しくて、もう次に出た時こそ絶対に優勝すると決めました。
まずは1年間世界一絵を描いたっていえるような自信をつけて挑もうと思い、似顔絵の営業中は10時間描いて、仕事から帰ったらどんなに疲れていても必ず1枚の作品を仕上げるっていう毎日を過ごしました。人生で一番絵を描いていた時期でしたね。あと、過去の大会の分析もして、どういう作品が評価されるのかというのも熱心に研究していました。技術力の高い先輩にコピックのカラーリングのテクニックを教えてもらったりというのもすごく参考になりました。

ー世界大会で田村さんが使用画材に選んだ画材がコピックだったとのことですが、コピックを選んだ理由は何だったのでしょうか。

世界大会の会場にはデジタルで描く人もいれば、油絵具で描く人もいるんですが、世界中から集まる出場者のなかでもコピックを使ったことがある人や知っている人は結構多いんですよ。見る人が経験したことのある画材で凄いカラーリングを魅せることができれば、その分「コピックでこんなに描けるの?」って驚いてくれるんですよね。テクニックを魅せてギャップを抱かせるためにも僕にはコピックが最適でした。
ライトに仕上げるイメージだったコピックでどれだけ重厚感を表現できるか、というのにこだわって、支持体をキャンバスに変えたり、塗り込み方を変えたりして自分なりのスタイルを作っていきました。

ーちなみに、コピックを使い始めた時期はいつ頃からでしたか?

似顔絵のプロ養成コースに通い始めてから、輪郭などの主線を使う教材としてこれを使うんだと教えてもらったのが最初です。今でこそ多くの漫画家やデザイナーが使っている印象がありますが、当時はそういう情報もあまりなくって、それまでそういう画材があるってことも知りませんでした。着彩に使うようになったのは更に入社後のことですね。

ー デザイナー時代のお仕事の経験などからデジタルツールも使いこなしていらっしゃると思いますが、今なおコピックで制作を続けている理由や想いをお聞かせいただけますか。

1点物の原画の価値を大事にしているので、まずアナログ以外で描こうっていう選択肢があんまりないんです。じゃあ絵の具を使うかといっても、色を作る工程がわずらわしい。コピックは最初から色が決まっているので色を作るって手間がかからないっていうのがまず利点ですね。
それに、コピックっていつどこで買っても毎回絶対同じ色が出るんですよ。似顔絵を描く時にスタンダードな画材として使っていた色鉛筆があったんですが、生産ロットごとに同じ色なのに色のブレを感じることがあって困ることもあったんですよね。コピックはそれがないのが凄いです。
あと、インク補充ができてサスティナブルなところも気に入っています。今日も持ってきたよく使うコピックたちは、もう10年くらい前から使っているものが多いですよ。

ーインク補充をしながらお使いいただけていて嬉しく思います。コピックで特によく使う色、欠かせない色はありますか?

好きな色はE71、R14、B24が好きですね。グレーならクールグレー(C系統)が自分の好みだし、綺麗に塗れる気がして一番好きです。

ー例えば、肌を塗る時は何色くらい使用しますか?

4〜5色くらいの同系色を重ねています。描く人物によりますが、日本人の方をモデルにした時によく使う色はE30、E11、E70、E71、E74などです。薄い色から塗っています。

ーアナログでずっと絵を描いてきたことで得たと感じる力はありますか。

絵って状況判断の連続だと思っていて、最終的にイマイチと感じる絵っていうのはイマイチな選択をし続けてきた集合体なんだと思うんです。的確な線を選び続けていったら、いい絵ができると思っているんです。だから毎回自問自答しているような状態で絵を描く時間は自分と向き合う時間でもあると思っていて、仕事をするうえで的確な判断をするためにその感覚が役立っていると思います。

ー主にInstagramに絵をアップすることで多くの人に絵を見てもらえるようになったり、お仕事関係の出会いを作ったりされたんですよね。上手くいかなかったことや苦労もありましたか?

もちろんあります。やっぱり独立してすぐはアカウントのフォロワー数を増やすことが大事だと思っていたので、色んな人に向けて投稿しましたが、なかなかシェアしてもらえなかったです。何をすれば反応を貰えるかがわからないので賭けだなと、一喜一憂しながら投稿していましたね。DMで「(有名人の)◯◯の友達だから絵を描いて」って言われて描いたけど反応がなくて、確かめたらただのファンだったとかもありました。

あと、苦労ではないですけど絵は毎日描いていました。絵描きになりたいのに何ヶ月も絵が完成しないのはまずいし、売れるかわからないとネガティブになって負のスパライルに陥る人も多いだろうと思ったので、1日1枚完成できるような速度で毎日描いて発信していこうと決めて取り組んでいました。

ー現在、絵を描く時間はどのくらいですか?

日中の仕事は打ち合わせや取材が多くて外に出ることが多いので、そういう仕事を済ませて日課のトレーニングが終わった後の夜10時から夜中2時頃までを制作時間としていて、その時間は毎日絵を描いています。前と違って「とりあえず描く」というより目的(仕事)があるから描くという風になったので、今は仕事以外の絵はあまり描いていないです。
ただ、その1日の制作時間では、これを完成させるぞと決めたらどんなに疲れていても描き切ります。自分と戦っているような感覚ですね。

ー2021年には初の画集を発売すると同時に、個展も開かれていました。

個展は、画廊の方にお声がけいただいたことをきっかけに開催することにしました。これまで描いたことのない、自然や動物などのジャンルに挑戦してみませんかってアドバイスをしてくださったんです。個展のために描くものも、作品の大きさもチャレンジでした。
僕の活動はイラストとアートで分けていて、イラストの方ではアスリートを描かせていただいたり、企業とコラボしてオーダーに沿った絵を描きます。イラストは相手や発注者の世界観を聞いた上でその人に喜んでもらうために描きますが、個展に出したような作品は逆で、いかに僕の世界に引き込めるかを目指して描いています。最初から絵を買う人の顔が見えてないので、なるべく自分の中から光が出るようなものを大事にしたいと思って制作に取り組みました。

ーテーマや取り組み方は変化しつつもずっと手を止めずに絵を描き続けられていますが、モチベーションの源泉はどこにあるのでしょうか?

僕はあんまりモチベーションを上げるっていう感覚はないんです。絵を描くこと自体が目的じゃなくて、会いたい人と会うとか夢を叶えたいっていうのがあって、その手段として絵を描いているので。だから絵を描くこと自体が楽しいとか辛いとかはあんまりなくて、これを描き上げた先に叶うものがあるから闘える、頑張れるっていう気持ちでいます。

ー新しい目標を立てては努力を重ねて実現してきた田村さんですが、次に目標としている像はありますか。

世界を代表するアーティストになりたいです。日本の活動でとどまらないで、特にアメリカだったり、中国だったり、グローバルにお仕事の幅を広げていきたいと思っています。

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石原瞳 https://copic.jp/interview/illustration/hitomi-ishihara/ Tue, 06 Dec 2022 02:23:15 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=19405 石原瞳千葉県出身。画家を目指していた父の影響で2歳から絵を描き始める。小さい頃の夢は少女漫画家になること。影響を受けた大好きな漫画家は手塚治虫さんと種村有菜さん。華やかで可愛い絵や、キャラクタータッチが大好き。東京デザイ […]

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石原瞳
千葉県出身。画家を目指していた父の影響で2歳から絵を描き始める。小さい頃の夢は少女漫画家になること。
影響を受けた大好きな漫画家は手塚治虫さんと種村有菜さん。華やかで可愛い絵や、キャラクタータッチが大好き。

東京デザイナー学院卒業後、2014年、運命的にカリカチュアの世界と出会ったのち、プロ養成コースに毎週通い、2015年に念願のプロデビューを果たす。翌年2016年から一般向けやプロを育てる教室の講師に就任。2019年にクリエイティブ・ディレクターと弊社マスコットキャラクターである「CJタコパス」をデザインする。

2020年オンラインでカリカチュア世界大会のセミナー講師を務め、2021年、悲願のカリカチュア世界大会総合優勝。

カリカチュアアーティストを志したきっかけを教えてください。

小さい頃から絵を描くことが好きでした。漫画を読むのも描くのも好きで、漫画家に憧れていた時期もあります。イラストレーターになりたくてイラストの専門学校に通い、卒業後はイラストレーターを目指しながらフリーターをしていました。その頃に、絵を描く仕事に就いていないことを知った友人が「こんな面白い仕事もあるんだよ」と似顔絵業界について教えてくれたのがきっかけです。

ご友人からのご提案だったのですね。

私も似顔絵を描く仕事について興味を持ったので、ショッピングモールに似顔絵師さんのいるスポットがあるから二人で絵を描いてもらいに行ってみよう、ということで実際に描いてもらいながら色々なお話をお聞きしたんです。
その方がカリカチュア・ジャパンっていう会社では似顔絵を描けるようになるためのスクールが開講されているよと教えてくださって、調べたら「プロ養成コース」というスクールの開講がちょうど1ヶ月後にスタートするタイミングだったんです。興味を持ったので早速申し込んで、似顔絵を描くための勉強を始めました。

似顔絵のどんなところに惹かれたのでしょうか?

私は自由な発想のイラストを描きたいっていう気持ちがずっとあったので、実在する人を再現するための似顔絵は自分には難しいんじゃないかなと勝手に壁みたいなものを感じていました。
でもプロの方に描いていただいたら、思っていた似顔絵のイメージと全然違ってすごく楽しくて感動して、私もやりたいと興味を持ちました。

プロ養成コースではどんなことを学びましたか。

ライブスケッチの技術習得と、プロとしての考え方などを教わります。プロの養成講座は2ヶ月間(合計8回の授業)で結構短いんですが、その分ものすごく課題が出されて、毎週必ず100人描くという宿題がありました。初心者のうちはとにかく数を重ねるというのが大事だったと思います。
コロナ禍になった今では出来ていませんが、当時は「街中で似顔絵を描かせてくれる人を見つけて似顔絵を描いてくる」という課題もありました。元々人見知りなので、知らない人に声をかけて更に絵を描かせていただくなんてってすごく緊張ましたが、お声がけした方が優しい方で、飲み物の差し入れまでくださって……そんな人の優しさに触れた思い出もあります。

講座を受け終わった後は、どうやってカリカチュア・アーティストになるのでしょうか?

講座の最終日に、最終競技会という作品制作の場があります。そこでアーティストであり代表のKage(氏)が、入社の意思がある人を対象に、作品の出来や上達具合、アーティストとしての資質を確認し、次のステップへ進めるかどうかを判断されます。後日、更に試験を受けて、そこで合格すると晴れてカリカチュア・ジャパンのアーティストとして認められ、店舗でのデビューが決まります。



プロ養成コース関東30期合格者記念撮影の様子(上段左から2番目が石原さん)

石原さんは見事1回で審査をクリアし、その後すぐ入社試験も通過しカリカチュアアーティストとしてのキャリアをスタートさせたとのことですが、特に困難だったことなどはありますか。

やっぱり似顔絵を描くうえで大事なのがお客様とのコミュニケーションなんですよね。似顔絵を描くにあたって、相手の方がリラックスできないと真顔になってしまいますし、真顔だと肝心の特徴がつかみにくいんです。
先ほども人見知りだったと話したんですが、初めての方と話すのが苦手で元々全然喋れなくて……でもそれじゃだめなので、お客様とちゃんとコミュニケーションが取れるように頑張りました。絵を描けるだけではなくて、総合的に色々な力が必要なんだなというのを痛感しましたね。

カリカチュアジャパンさんは全国各地に出店されていますが、どちらの店舗に勤めていたのですか?

だいたい半年〜1年で次のお店に異動することが多いのですが、浅草、原宿、お台場、横浜赤レンガなどの人気の観光施設が多かったです。大阪、神戸、京都など関西の店舗にも行っていました。
イベントシーズンが繁忙期になっていて、忙しい時期は50~60名くらいの人数を描いていました。

コピック,コピックスケッチ

コピックは講座の中で初めて使われたのですか?

そうですね、絵を描くのは小さい頃から好きでしたし、小さい頃の夢は少女漫画家になることだったので、コピックのことは前から知っていたのですが使ったことはなかったです。漫画家さんとかプロの人が使っているってイメージで憧れの画材でした。

初めてのコピックにはどのように慣れていきましたか?

カリカチュアのスクールでは、似顔絵の主線をコピックスケッチの100を使って描いていくことを学びます。プロ養成コースの2週目に使い方を学ぶのですが、講師から丁寧に使い方のコツを教わるので割とすぐ慣れることはできました。コピックを持つ手を紙につけて、しっかりと安定したストロークを描くことから、筆圧で強弱をつける練習を行いました。課題がたくさんあったとお話ししましたが、とにかく量を描くので練習する中で自然と慣れていきます。
慣れてくると繊細な描き分けができますし、SNSで海外の方から「何の画材を使ったらこんなに綺麗な線を描けるの?」とコメントをいただくことも多いです。

コピックでカラーリングするようになったのはいつ頃からですか?

入社して半年くらい経ってから、コピックでカラーリングする似顔絵も描くようになりました。似顔絵のメニューに「プレミアム」という、主線だけでなく着彩もコピックで行う商品があるので、その対応ができるようになるために練習します。
最初は塗りムラができたり少し苦戦することもありましたが、先輩方につきっきりで教えていただけますし、独学ではコピックイラストのメイキング本を参考にしていました。濃い色を塗ってから薄い色を重ねてのばしていくと綺麗なグラデーションになるとか、ためになることも多かったです。

コピックのカラーリングを習得された先輩として、これから使ってみたいという方にアドバイスをお願いします!

やっぱり、コピックはインクが乾くのが早いのが特徴なので、カラーの時はスピーディーに塗るように意識しています。光とかハイライトに向かってはらうように塗っていくと、ムラのない綺麗な塗りができますね。
あと、コピックを使う時は紙選びがすごく大事だと思います。コピックから出ている紙も何種類か試してみました!特に個人的に好きなのは、薄いPMペーパーと、つるつるして厚みのある特選上質紙です。発色も色の塗り心地も変わるので、色々試してみてほしいですね。

コピックでよく使う定番色があれば教えてください。

人の肌を塗るときは、ほっぺや唇などにピンクを使って血色よくかわいく仕上げたいのでR22は必須ですね。肌のベースだと、E01、E02、E11、E31、E71を頻繁に使います。E71は特に暗いところの影の描き込みなどに活躍します。

昨年開催された世界大会(第30回ISCAカリカチュア世界大会)では悲願の総合優勝受賞おめでとうございました!世界大会とこれまでの経歴について教えてください。

ISCAカリカチュア世界大会は、アメリカのラスベガスで年に一度開催される似顔絵の世界大会です。世界中から約250名ものカリカチュアアーティストが参加し、4日間の競技期間の中で、自分のブース(横1.5m、縦2.5mの壁)を似顔絵で埋めていき、その似顔絵の出来で優劣を競うものです。
私は2015年に初めてカリカチュア・ジャパンの代表として出場させていただいて、出場は今回が5回目でした。経歴としては、初出場した時は何も獲れなかったのですが、2回目は総合8位、3回目は総合10位、4回目はオンラインのみの開催で総合優勝はなかったのですが部門賞をいくつかいただきました。


世界大会にコピックのカラーリングでチャレンジされたことはありますか?

2016年に出た時のカラーリングは全てコピックでした。2019年もコピックを使いましたね。エアブラシのハンドピースにコピックのインクをいれて着彩するというのを試しました。一般的なインクと違って、コピックのインクだと艶が出てキレイになるんです。好奇心が強いほうなので、画材は色々試しています。

多くの方から注目されたと思うのですが、このモザイク柄のようなイラストはどのようにして制作されているのでしょうか。

世界大会には高い画力とユニークなアイデアを持った作品が集まるので、みんなが見たときに「こう描いてるんでしょ」とわかるようなカラーリングだとなかなか評価されないと感じていて、目を引けるような一工夫したものでないと勝つのは厳しいと考えていました。

何か新しい技術をと思っていたところ、専門学校の時に制作したコラージュの課題を見つけまして、これをコンテストに取り入れてみたら面白いかな?と思って試してみたのが成功に繋がりました。趣味で集めていた本とか雑誌のページを切り刻んで、各色ごとの素材としてデジタルに取り込んで、カラーリングの際に絵にはめていきます。素材作りが本当に大変で、始めた時は一瞬後悔しました。

通常の大会は現地参加のみですが、今年はオンラインと現地参加があったそうですね。大変なこと、印象的だったことを教えてください。

世界大会は、会場でも頑張っている人や熱量が高い人が注目されやすいと感じているので、オンラインだとその頑張っている様子が伝わりづらいぶんハードルが高いだろうと思っていました。無事に受賞できて良かったです。現地にいると参加者がいるのでアドレナリンが出ているのか全然寝なくても大丈夫で、ずっと描き続けていられるんですけど、家に一人だとモチベーションを保つのが難しかったですね。ただ、存在感を少しでも出すために、SNSでは大会に参加していることを積極的に発信するように意識していました。

世界大会で優勝するという目標を叶えられましたが、今後挑戦していきたいことはありますか?

私は2016年からスクールの講師を担当していますが、2020年から拡大したコロナをきっかけに講習のオンライン化が進んだことで、海外の方へ教える機会も増えました。今後は世界中に教室を開き、多くの人と絵で繋がり、人の心を温かくするような絵を描き続けることが目標です。

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Sylvain Bordesoules https://copic.jp/interview/illustration/sylvain-bordesoules/ Mon, 17 Oct 2022 06:57:09 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=21495 Sylvain Bordesoules パリを拠点に活動する若手アーティスト、イラストレーター。映画の絵コンテ(ストーリーボード)担当としてキャリアをスタート。フランスの出版社・ガリマール社から初のグラフィックノベル「L […]

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Sylvain Bordesoules

パリを拠点に活動する若手アーティスト、イラストレーター。映画の絵コンテ(ストーリーボード)担当としてキャリアをスタート。フランスの出版社・ガリマール社から初のグラフィックノベル「L'été des charognes」を出版予定。

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自己紹介と、Sylvainさんの経歴について教えてください。

こんにちは、Sylvainです。私はフランス出身の29歳(2022年時点)で、アーティスト、イラストレーターとしてパリを拠点に活動しています。2020年にパリのCesanのコミック・イラストレーション学校を卒業しました。

私の最初のグラフィックノベルが2023年の春にガリマール社から発売されるんですが、いまは2024年後半に発売予定の2作目を執筆しているところです。

バンド・デシネ(※)のアーティストとして知られています。日本の漫画やアメコミと並んで、バンド・デシネはコミックの主要なジャンルであり、長い伝統があります。バンド・デシネと、ご自身の作品について教えてください。
(※バンド・デシネ:フランス・ベルギーなどを中心とした地域の漫画。日本の一般的な漫画と異なり、カラーで制作されることも多い。)

私はとても夢見がちで、いつも架空の世界や、想像力をかき立ててくれる物語に浸っていました。物心ついたときから絵を描いていた私には、バンド・デシネは思い描くものすべてを形にするための自然な方法です。従来のバンド・デシネのスタイルはページ数などの物理的な側面で体系化されていましたが、いまは本当に進化していて、表現手法がとても自由になりました。漫画やスーパーヒーローのコミックスなどの他ジャンルも、自分自身を十分に表現しながら、実験もできるメディアを創り出すのに大いに役立ったと思います。

私にとって、漫画は自分を表現する手段であると同時に、読者と語り合う手段でもあります。私の読者はいっしょに歩み、私の話に耳を傾けるのを歓迎してくれていて、すごく心地がいいんです。

あなたの作品は物語に満ちていて、まるで映画のワンシーンのようでもあり、現代アートのようでもあります。あなたがインスピレーションを受けた人やモノはありますか?

映画にインスパイアされることは確実にありますね。映画関連の仕事を少ししていて、絵コンテを担当してました。プロの仕事としてはそれがはじめてだったんですが、その後の人生にとても役立っていると思います。その瞬間の気持ちや、「自分が何を見せたいのか」といったことを意識しながら描いているので、私の作品に物語を感じてもらえるのはとても嬉しいです!映画監督と一緒にいろんな映画を見るんですが、いいなって思ったポーズや照明をキャプチャしようと一時停止することもよくあります。

確かに映画とバンド・デシネは似ているところがあります。アングル、ポーズ、背景、役者あるいはキャラクターなど、ストーリーに最適なものは何かを考えないといけないですからね。同じようなものだって思うんですが、バンド・デシネのほうが低予算で済みますね(笑)。

あと、モネやルノワール、ホッパーといった印象派の画家たちに魅力を感じることに気づきました。線を正確に描くのではなくその瞬間の空気感で感覚で何かを伝えるような表現といいますか、そういうのにすごく惹かれます。

これまで制作した中でもっとも気に入っている作品はありますか?

うーん、難しいですね。好きな作品は毎日、もっといえば気分で変わります。ある絵にすごく満足したかと思うと、次の瞬間には燃やしてしまいたくなったりもします(笑)。でも、今のところ、水中を描いた絵が一番好きです。感覚的で、線をあまり使わず色だけで水の感じを伝えていて、夏っぽいし、フレッシュだし。ちょっと自分のノスタルジーも入ってるかもしれないですね。

コピックを知ったのはいつ頃のことだったのでしょう?コピックを使い始めた理由はなんですか?

初めてコピックを知ったのは高校生のときでした。美術の授業で、ある先生がコピックを見せてくれたのですが、すごく気に入って、そのあと漫画の専門学校に入ったとき 「よし、コピックで何かやるぞ」って思ったんです。以前は仕事でカラーインクを使っていて、青と黄色と赤で色を作る実験をしてたんですが、それじゃ物足りなく感じていて、はじめてコピックを手にしたときは、ほんとうに啓示を受けたようでした。
先生はコピックで描いた作品がクリエイティブだと褒めてくれたし、自然に使うようになったんです。どう使うか考えたりもせず、ただコピックを手に取って描いてました。


余計な線を極力排除できるような方法を探していて、「色を使って表現したい」「ペンで線を描いていくのではなく、色で彫刻するような感覚で描きたい」と思っていました。カラーインクは私には合わなかったし、絵の具はたくさん描かなければならないときには手早く簡単に作業できないので、私にはマーカーがベストの選択肢でした。

デジタルで描き始める若い方が増えていますが、コピックを愛用してくださるのはとても嬉しいです。マーカーなどのアナログ画材を使う際の工夫はありますか?

正直に言うと、デジタルって苦手なんです。使ってみたいとは思うんですけど、やっぱり自分には紙や道具の感触や、筆圧を体感することが必要だと感じています。


コピックは色が豊富で、手早く使えるし、他のマーカーでは出せない透明感が出せるので、私には最高のツールです。微妙なニュアンスも出せるし、ノイズになるような色を入れたくなければ入れなくていいしね。どのマーカーでもそれができるわけではないと思います。

お気に入りのコピックの色と、選んだ理由をお教えください。

コピックを使い始めたころは、BV31に夢中でした。明るい紫色で、陰影をつけるためにいつも使っています。いまは使う色が増えたから、好きな色を選ぶのは大変ですね。E04は、キャラクターの影にコントラストをつけたいときにいつも使っている色です。自然できれいな色なので、輪郭を決めていくときにすごく役立っています。また、ウォームグレー系には心地よさがあって、美しいニュアンスを与えることができるし、黒や白の代替として使えますよね。

コピックアワード2021に応募していただいた「Someone is missing」という作品についてお教えください。こういった世界的なコンテストに参加した感想はいかがでしたか?

ものすごくいい経験でしたよ!自分の作品を世界に向けて発信するのは楽しいことだし、たくさんのすてきなコメントもいただきました。

「Someone is missing」という作品は、学校の卒業制作の一部だったんです。老夫婦の一人が亡くなって、もう一人が残されてしまったというちょっと悲しいストーリーです。今はこの物語をしまい込んでるわけですが、いつか日の目を見ることがあるかもしれないです。

現在取り組んでいる新しいプロジェクトについてお聞かせいただけますか?

最新のプロジェクトは、フランスの人気若手作家であるサイモン・ヨハニンの小説「L'été des charognes」のグラフィックノベル化ですね。この小説は、2000年代後半のフランスの田舎町を舞台にした、11歳から18歳までの少年たちの話なのですが、裕福でもなく文化的でもない家庭に生まれた彼らが、その社会階層から抜け出すことの難しさを描いてます。

私たちは人をジャッジしがちですよね。でも、美というものはどこにでもあって、時間をかけて彼らを追いかけて耳を傾ければ、誰もが興味深く、かけがえのない存在であると伝えたいです。

他に進行しているプロジェクトも同様の方向性で、南仏のニースで2人の姉妹が過ごす、トラブル・困難・そして喜びに満ちた旅を追っていきます。2022年のフランスで、人々の生活がどのようなものだったかを思い起こさせるような作品になるんじゃないかな。人々がお互いを見つめ合って、人生の美しさを理解できるような、そんな作品にしたいと思ってます。

世界中のコピックコミュニティの皆さんに伝えたいメッセージや、アドバイスなどあればお聞かせください。

夢に向かって、絵を描きつづけ、自分を信じることです。すべては可能なんですから。

アーティストになるという夢が、夢に終わらないで現実になるなんて想像もしていませんでした。高校時代に美術の授業は受けてましたが、いろいろな事情で18歳になったときに美術の勉強をやめて、リアルな世界で働くことになったんです。食品業界でやりたくない仕事をしたりして……それでも生活は続いていくわけです。どうすればいいのかわからないまま、漫画を出版することを夢見ていました。けれど、25歳で発起して美大に戻ったら、チャンスを与えてもらえる機会に恵まれ、学校卒業後すぐに本が出せました。だから何かをしたい時に遅すぎるということはないと思います。チャンスを生かして、時間をかけて自分自身を発見し、何をしたいのか、どうしたいのかを考えてくださいね。私みたいにずっと待ってたらダメですよ。

そして、もしあなたがコピックに惹かれるなら、ぜひ試してみてくださいね!

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Grangel Studio https://copic.jp/interview/grangel-studio/ Tue, 27 Sep 2022 05:30:53 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=21364 Grangel Studio(グランゲル・スタジオ)長編アニメーション映画のコンセプトアートやキャラクターデザインを手がける世界的デザイナーのCarlos Grangel、Jordi Grangelが立ち上げた、スペイン […]

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Grangel Studioグランゲル・スタジオ
長編アニメーション映画のコンセプトアートやキャラクターデザインを手がける世界的デザイナーのCarlos Grangel、Jordi Grangelが立ち上げた、スペインのバルセロナに拠点を置くデザインスタジオ。 『マダガスカル』『カンフー・パンダ』『コープス・ブライド』『ヒックとドラゴン』など多くの人気作品に参加している。

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インタビューをお受けいただきありがとうございます。Grangel Studioについて、簡単に紹介をお願いいたします。

Grangel Studioは、私たち兄弟で行っているデザインスタジオです。兄のカルロスと弟のジョルディ・グランジェの二人で1985年にバルセロナにスタジオを設立してから、ハイクオリティなアニメ映画のプリプロダクション(映画などの撮影に入る前に行う準備作業全体のこと)のためのコンセプトアートに携わってきました。

設立して最初の5年間はイラストやコミックの制作や広告用のレンダリング制作をしていましたが、1990年以降はアニメに注力するようになり、現在までに25本以上の長編映画に携わりました。これまで携わった作品には『バルト』『プリンス・オブ・エジプト』『エル・ドラド 黄金の都』『スピリット』『シンドバッド 7つの海の伝説』『マダガスカル』『カンフー・パンダ』『コープス・ブライド』『ヒックとドラゴン』『ホテル・トランシルバニア』『ロン 僕のポンコツ・ボット』などが挙げられます。その他の作品を含む完全版のリストにご興味のある方は、ぜひwww.grangelstudio.com をチェックしてくださいね。

世界中の人に愛されるキャラクターを次々生み出されていますが、Grangelさんがイラストを描き始めてから大切にされていることはありますか?

イラストやキャラクターを描きたいという情熱と意欲は常にあります。漫画やアニメが好きだったので、美術技法だけでなくアニメーションの技術も勉強して、その後で自分たちのやり方を確立していきました。

私たちが大切にしている3つのエッセンスがあって、それは情熱、想像力、そして規律です。Grangel Studioは、いわばスタイル、様式の研究所です。作品に最適なルックと、ストーリーに最も適したキャラクターを作りたいと考えています。

制作をするうえで、インスピレーションを受けている人やモノはなんですか?

主に古今東西のアートや、自然からインスピレーションを得ていますね。自然は常に私たちのインスピレーションの源です。自然や動物が登場する長編アニメを数多く手がけましたが、自然を観察することは抱えている問題を解決しますし、洗練されてスタイリッシュなキャラやデザインを生み出す上で重要な鍵になりました。

いま現在取り組んでいる新しいプロジェクトはありますか?

現在、ストップモーション、伝統的な2Dアニメ、そして3DのCGIと、3種類の長編作品でキャラクターデザインに取り組んでいます。あと、今年ギレルモ・デル・トロ監督の『ピノキオ』が上映されるんですが、共同でピノキオとゼペットじいさんのキャラクターデザインを担当しました。

それ以外にも、個人的なプロジェクトがいくつかありますが、現在のプロダクションに比べると、かなりゆっくりしたペースで進めています。

また、イタリアとスペインで作品の展覧会をいくつか計画しています。いつか、大好きな日本で展覧会を開催できればと思っています!

コピックに特別にご提供いただいたキャラクター「Mudskippers(マッドスキッパーズ)」についてお聞かせください。このキャラクターはどのように誕生したのでしょうか?

フレンドリーな生き物の家族のキャラクターシリーズを作りたい、と思っていたんです。そのアイデアがMudskippersに発展したのは、グラフィックとビジュアルの面で、コピックのカラーチャートを最大限に活用できそうな可能性があったからです。各キャラにはメインとなる色が設定されていて、それぞれの色が各キャラクターごとの個性を表現しています。メイン色以外にも違う色調のバージョンがあって、コピックのチャートから1キャラあたり平均4~6色は使っていることになりますね。
Mudskippers関連のデザインはすべてコピックに寄贈させていただきました。世界中のアーティストにインスピレーションを与えるために、私たちのキャラクターを活用していただければと思います!

素敵なキャラクターたちを寄贈していただけて光栄です!コピックを長く愛用してくださっていますが、コピックを使い始めたのはいつからですか?

私たちのスタジオでコピックを使い始めたのはずいぶん前、記憶が正しければ1993年ごろです。
監督やプロデューサーも、その繊細で美しい色彩と、豊富なカラーバリエーションが使いやすいと気に入ってくれました。また、コピックの色が増えていったことで、それぞれのキャラクターに適した色選びの可能性が広がりました。例えば、コピックは人間の肌色を表現するのにとても適しています。私たちにとっては、これがコピックが他のどのブランドよりも優れていると思うポイントで、キャラクターの彩色にとても役立っています。また、グリーン、イエロー、ブルー、ブラウンなどの色も豊富に揃っていて、背景のデザインに役立っています。

コピックは高品質の製品を作っていますが、私たちもそういう姿勢で仕事していきたいと思っているので、私たちにとって完璧な組み合わせですね。

色の幅の豊富さをお褒めいただきありがとうございます。もし、特にお気に入りのコピックの色があれば教えてください。

好きな色はたくさんあります。いくつか挙げるのは難しいのですが、グレー系で色調を決めたり陰影をつけていくときは、クールグレーとウォームグレーを好んで使っています。また、キャラクターの白目の部分にボリュームを持たせるときにナチュラルグレーのN-1を愛用しています。

他には、E18 Copper、E29 Burnt Umber、E81 Ivory、YG11 Mignonette、R00 Pinkish White、YR01 Peach Puff、B97 Night Blue、B99 Agate、G99 Olive、RV000 Pale Purpleなどがお気に入りです。

コピックで作画するときのポイントやテクニックがあれば、ぜひ教えてください。

もちろん!いくつかありますが、まず薄い色から始めて、その上から濃い色を重ねていくのが基本のコツですね。キャラクター一人あたりで平均4〜7色の色を使用しますが、肌の色はh異なる4色で4回ほど重ね塗りすることでボリューム感を出し、キャラクターをより生き生きとさせます。キャラの服も同様に、1着につき4~7色を使って着色しています。
キャラクターの陰影を描くときはグレーを使うことが多いです。クールグレーのC-2や、ウォームグレーのW-2がすごくちょうどいいんです。

彩色する範囲が大きい場合は、コピックインクを使用します。背景に空が広がっているときや、ジャングルのように緑の部分が多いときは、インクをスポンジにつけて使ったり、コピックワイドを使います。空の種類によって、3~4種類のブルーを使い分けていますよ。

スケッチするときは、コピックマルチライナーを愛用しています。キャラクターの輪郭を描くのに最適なんです。目の黒い部分(瞳孔)には、マルチライナーのブラックで線幅が0.03mm、0.2mm、0.5mmのものを使っています。

とても熱い回答をありがとうございます!Grangel Studioこれからの展望や目標についてお聞かせください。

私たちは本当に仕事を楽しんでいます。世界中の異なる文化圏の新しいアーティストと仕事するのも楽しみだし、より多くの経験を積んで、Mudskippersのようなオリジナルな作品を生み出していきたいですね。また、私たちが得た経験や遺産を、熱心な新しい世代に教え、引継いでいければいいなと思っています。

この記事を読んでくださっている方に、伝えたいメッセージやアドバイスなどあれば一言お願いします。

クリエイティブになろう!自分の手を使って、必要なら指を汚すことも厭わないで。情熱を持ち続けて、楽しみましょう!

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Wisut Ponnimit https://copic.jp/interview/illustration/wisut-ponnimit/ Fri, 03 Jun 2022 08:29:05 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=19370 ウィスット・ポンニミットInstagram1976年、タイ・バンコク生まれ。愛称はタム。バンコクでマンガ家としてデビュー。2009年『ヒーシーイットアクア』により文化庁メディア芸術祭マンガ部門奨励賞受賞。現在はバンコクを […]

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ウィスット・ポンニミット

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1976年、タイ・バンコク生まれ。愛称はタム。バンコクでマンガ家としてデビュー。2009年『ヒーシーイットアクア』により文化庁メディア芸術祭マンガ部門奨励賞受賞。現在はバンコクを拠点にマンガ家・アーティストとして作品制作の傍ら、アニメーション制作・音楽活動など多方面で活躍する。主な作品に「マムアン」シリーズ、『ブランコ』(小学館)、『ヒーシーイット』シリーズ(ナナロク社)など。

あなたの経歴についてお聞かせください。

漫画を描きはじめたのは1999年からで、タイの雑誌に作品を寄稿していました。

2003年から2005年の間、日本語を勉強するために神戸に滞在していたのですが、関西ローカルの雑誌からオファーがあって、ちょっとした仕事をさせてもらえることになりました。誌面に小さなスペースをもらえたので、そこに収まるようなイラストを描くようになって、それで生まれたキャラクターがいまのマムアンなんです。

マムアンが誕生するきっかけはありますか?

きっかけは、自分じゃなくて他者に目を向けたからだと思います。というのも、1999年からオリジナルの「He She It」という作品のキャラクターをたくさん描いていました。この作品では自分自身や自分が考えていることにフォーカスしていました。でも2003年まで5年間描き続けて、その間ずっと自分のことばかり考えて描いていたので、他の人のことを考えるようにしたんです。そうしたら今まで関心がなかった人、特に好きでもなかった人に興味を持つようになりました。彼らは何を考えているんだろう?どんなことが好きなんだろう?って。

昔は、「この人つまらない」とか「この人はこういうところが好き」とか、そういう自分の基準で判断してましたけど、年を重ねると、彼らの行動にもなにか理由があるはずだ、と思うようになりました。その人を「悪人」と決めつけるのではなく、その人が良い人でなくても、自分とは違うんだ、と判断するようになった。もっと他者のことを気にかけるようにすれば、彼らが何を考えているか見えるようになるというわけです。

それで、いろいろなキャラクターを描いてみた中の一人がマムアンだったんです。キャラクターにはいろいろなタイプがありますよね。ミステリアスなキャラクター、笑えるキャラクター、善人、それに悪人みたいな。マムアンには特別なストーリーがあるわけでもなく、ただ笑って立っているだけの、シンプルな子なんです。

イラストを描くために5年間日本に滞在していたそうですが、そもそもなぜ日本に来ようと思ったのですか?

日本に来るきっかけになったのは「ドラえもん」です。我が家では、子供に経験を積ませるために母は兄を留学させていました。私も、短期留学でイギリスかアメリカの美術学校に行ってみようと思ってたんです。でも、もし本当に留学して学校に通うのであれば、その国で自分は何をすべきなのか?というのはよく考えていました。
例えば、アメリカに行ったとして、なんでアメリカに来たの?と聞かれたら、これといった答えが見つからず「ミッキーマウスが好きだから来ました」と答えるかもしれない。でも、心の中では、いや、本当はドラえもんの方が好きだなと思っていることに気づきました。本心でない留学のことを考えたとき、それが日本に行くという判断の決め手になったんだと思います。

若いころは、いつも親の理解を得られるような理由づけをしていました。親に満足してもらうためにヨーロッパが好きなフリをしたりして。でも、年を重ねて、ドラえもんが大好きなのは間違いないし、日本のアニメが好きなのも本当のことだよな、って自分のことを受け入れられるようになりました。

特に、日本のアニメに惹かれた理由はありますか?

子供のころ、どこの国のものでも問わずに多くのアニメをよく見ていました。そのなかでも日本のアニメって独特で、他の国のアニメだと、トムとジェリーのようにけんかして仕返しし合うという図が多くて、見ていくうちにこっちも攻撃的な気持ちになってしまって、鬱積した恨み、怒りを感じました。
でも、日本のアニメだと、けんかした後でも友達になるということがよっくあります。視聴者としては、恨み続けるのではなく、お互いを尊重して助け合うのがカッコイイなという感情が沸き上がるんです。だから、西洋のアニメより、優しさや尊敬を感じられる日本のアニメのほうが好きでした。

アーティストであること、そして作品を創ることへのモチベーションは何ですか?

日々の生活から何かを学ぶ、ということを意識しています。例えば、物事をうわべだけで見ないということ。餃子って一見おいしそうに見えないけれど、食べてみるとおいしい、とか。だから、見た目で判断してはいけないと学びます。私は何かを学ぶと、それを「記録」したくなるんです。そういった学びを記録するために漫画を描いています。

最初の頃は、もっとストーリー性がある漫画を描いていました。キャリア初期には物語を伝えるために漫画を描いていましたが、今は一コマ漫画だったり、ストーリーにこだわらないものを描くようになりました。
私のインスタグラムを見ていただけるとわかるのですが、作品を一つずつ投稿しています。つまり、生活の中で学んだことを漫画や文章に変換しているんです。

「記録」するのは、読者に「こんなことがあったよ」と伝えたいからです。もし、私と同じような問題に直面した人がいたら、私の作品を読んでも時間を無駄にすることはないと思うんです。もし作品を読んでくれていたら、もっと早く先に進めるかもしれない。それっていいことじゃないかなと思います。

マムアンは単なるイラストではありません。あなたはいつも短い、意味深い言葉を添えていますが、これはどのような理由があってのことなのでしょうか?

実際のところ、絵を見てもらいたいわけじゃなくて、私が人生で学んだことを伝えたいんです。私の場合は、自分は絵がうまいと言いたいわけでも、絵のうまさをアピールするために描いているわけでもない。でも、自分が学んだことを伝えたい。私はそういう人間なんです。でも文章だけだとわかりにくいので、わかりやすくメッセージを伝えやすくするために絵を描いているんです。

この世には数多くの人気キャラクターが存在していますが、マムアンが世界中にファンのいるキャラクターに成長した理由があれば教えてください。

推測ですが、たぶん第一の理由はメッセージなんじゃないかな。私のメッセージでは、みんながやったことあるような、経験をしたことがあるようなことを書いているので、共感してもらいやすいです。2つ目は、SNSに投稿しているのですぐに拡散されやすいことですかね。

また、皆さんが私の絵を繰り返し見てキャラクターを覚えてくれるんです。別のキャラでも描き続ければ、いずれは認知されるかもしれないですね。SNSには、そういうわかりやすいメッセージ力がありますからね。

コピックで好きな色は何ですか?あなたの好きな色調やカラーグループを教えていただけますか?

私がよく使う色はE21(肌の彩色に使用)とR00です。このへんの色は柔らかくてきれいなので好きです。

あとはYR000や、E71みたいな変わった色もいいんですよね、ちょっと紫がかったやつ。でも本当にその時々によりますね。他の色に惹かれちゃう時もあります。

前述したとおり、私の目的はメッセージを伝えることなんです。濃かったり鮮やかな強い色だと、色の主張が強すぎて絵に込めたメッセージが色に引きずられてしまうので、絵をコントロールするために淡い色をよく使っています。

コピックを使いはじめたきっかけは何ですか?

もともとは水彩を使っていたんです。でも仕事が増えて締め切りが厳しくなってくると、焦ってしまって(準備や乾くのを待つ必要がある)水彩で描くのが難しくなっちゃったんです。もっと楽しく絵を描きたいという気持ちになって、それなら手早く作品を仕上げられる画材を見つけようとなったわけです。そのほうが気持ちよく作業できるし、そもそも私の目的はアートを通して人生で学んだことを伝えることですから。

コピックを知ったとき、まず簡単に素早く描けるのが気に入りました。ストレスにならないし、面倒くさくないし、洗わなくていいし。作品を提出するときにはもうしっかり乾いていて、スキャンしてもキレイに仕上がるんです。水彩よりも印刷に向いてますね。水彩の混色は難しくて、私は苦手なんです。それらがコピックを愛用している理由です。

コピックが仕事の役に立っているのでしたら私たちも嬉しく思います。

コピックのおかげで仕事がはかどるようになりました。仕事が早くなればなるほど経験値も上がりますし、結果的に作品をもっと早く広めることができるんです。


コピックファン、そしてファンの方に向けて一言お願いします。

私は紙とペンを使って絵を描いてます。パソコンでもタブレットでもなく、紙に描いていると楽しいし、落ち着くし、集中できます。それに電気とかを使う必要もない。今の時代はパソコンとかインターネットとかばっかりだけど、地球につながっていることを忘れずに、それを大切にしている気持ちが皆に届いたら嬉しいです。電気を消して、土の上に立って、空気を吸って、紙を触って絵を見て、文字を読んで、幸せになってください。そしてコピックを楽しみましょう。

いまだに紙に描いている皆さんには、自信と喜びと誇りをもってほしいですね。私たちは電気と共存する必要はないと思います。紙に絵を描いて、充電の心配をする必要のない生活。それは次世代の人たちには理解できないかもしれない、幸せなことなんです。あなたが紙に絵を描いて幸せなら、私も幸せだし、これからも自信を持って続けてほしいです。

(アーティストとして憧れてくれる方もいますが)私みたいにならなくてもいいんです。自分らしくいるほうがずっといいです。私より絵が上手な人ならタイでも海外でもたくさんいますしね。

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中垣ゆたか https://copic.jp/interview/nakagakiyutaka Wed, 23 Feb 2022 08:59:24 +0000 https://copic.jp/?post_type=interview&p=17095 中垣ゆたか (なかがき ゆたか)絵本作家、イラストレーター。1977年福岡県生まれ。東京都町田市在住。2005年からフリーイラストレーターとして活動を始め、その年に音楽雑誌よりデビュー。主な絵本に『ぎょうれつ』、『UFO […]

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中垣ゆたか (なかがき ゆたか)
絵本作家、イラストレーター。1977年福岡県生まれ。東京都町田市在住。2005年からフリーイラストレーターとして活動を始め、その年に音楽雑誌よりデビュー。主な絵本に『ぎょうれつ』、『UFOのつくりかた』、『ひらいてびっくり! のりもの のりもの』(以上、偕成社)、『よーい、ドン!』(ほるぷ出版)、『さがしてみつけて なんじゃこりゃ!まつり』(ひさかたチャイルド)、『にんじゃなんにんじゃ』(赤ちゃんとママ社)、『宇宙オリンピック』(くもん出版)、『いろどろぼう』(金の星社)などがある。
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―絵本作家、イラストレーターとして活躍している中垣さんですが、これまでの経歴を教えてください。学生の頃から画業を目標として絵を描いていたのですか?

実は絵を本格的に描きはじめたのは28歳ごろで、仕事にしようと思って動き始めたのは周りに比べたら遅い方だったと思います。絵を描きはじめたきっかけなんですが、大学生の時に突然原因不明の病気になってしまって、大学にもほぼ通えずずっと自宅療養を余儀なくされる期間が長く続いたんですね。
ようやく身体が動くようになってきて何か仕事をしないと、と考えたときに、自宅療養中に長く親しんでいた映画とか音楽などに関わる絵なら描けるんじゃないかとふと思ったんです。
それで、好きな雑誌の編集部とか出版社の連絡先を片っ端からチェックして電話をして、絵を描かせてくださいと営業をかけはじめました。たまたま話を聞いてくれる方に巡り合って、そこから絵の持ち込みを始めました。

ーその行動力と、絵について特に学んだことがないということに驚きです。絵の持ち込みをしてから、イラストレーターとしての活動を始めるまでどのくらいかかりましたか?

持ち込みを始めてから半年くらいで、初めてお仕事をいただきました。
営業の電話をした時にたまたま拾ってくれた雑誌のデザイナーさんから「とにかくいっぱい絵を描いておこう」というアドバイスをもらって、ポートフォリオを作るためにもたくさん絵を描いていました。

ー 最初はイラストレーターとしてのお仕事が主だったとのことですが、絵本作家になるまではどのような流れがあったのでしょうか。

元々絵本にも興味があって、絵本業界に絵の持ち込みをしたこともあったんです。でも、自分自身が絵本とか本を作った経験もなかったですし、「君には難しいよ」と厳しく断られることもあり、なかなか難しかったんですよね。
でも、イラストレーターとして仕事を受けているうちに、福音館書店の「たくさんのふしぎ」の表紙を描かせていただける機会をいただけたんです。
絵本業界でも注目度の高い雑誌で、その表紙の絵を見た別の出版社の方から「絵本を描いてみませんか?」とお誘いいただけて、それが絵本デビューに繋がりました。

ー絵本制作を手がけてみた感想はいかがでしたか。

「こんな絵が描きたいです」と担当の方とお話しながら描き始めて、本編の絵を描きながらも「この話のオチどうしよう?」と話しあうという……今思えばかなりゆるい作り方でした。
絵本の作り方って会社とか人によって本当に様々で、毎回違うのでそれを知るときの面白さもあります。編集さんとの分業度合いとか、デザイナーさんが最後の方で参加することになったりとか。

ーイラストのお仕事の時とはかなり勝手が異なるのですね。

挿絵などのイラスト仕事の場合はリクエスト通りに絵を描くところまでで仕事が終わるので、実際にどんなふうに自分の描いた絵が使われるのかわからないことも多いんですけど、絵本の場合は最初から最後までずっと携われるのがいいなと思います。
編集さんとの付き合いも違って、イラストの場合だと長くて1ヶ月くらいの付き合いなんですけど、本を作るとなると半年~3年、長いと5年以上にわたり一緒に作品を作っていくことになります。気が合う編集さんとできると嬉しいし楽しいですね。

ー描きたいものをイメージされるとのことですが、特に描くのが好きなものはありますか?

人を描くのが好きですね。モノを描くより、人を描くほうが好きなんです。一番最初の仕事も人のイラストの仕事でしたし、思い入れもあるのかもしれません。

ーこちらのイラストはお仕事とは異なるものですか? こちらもすごい数の人が描かれていますね!

そうですね、これらは自己満足というか、息抜きに描いているものです。
仕事のイラストっていつも4案件ぐらいを同時進行でやっていくんですけど、煮詰まらないように仕事に関係ない絵も描いています。

ー絵本のアイデアはどのように形にしていくのですか?

とにかくわくわくできるような絵が描きたくて、自分が好きなものをテーマに「こんな絵が描きたい」というのを目標にして、そのためにストーリーを考えていく感じです。
例えば、新作の『人体ジェットコースター』では、人間の身体について描こうと決めた時に、目でギロッとにらまれているシーン、耳から出ていくシーン、食道から食べ物が落ちていくシーンは絶対に描きたいと思っていました。

ーコピックはいつから使用されているのですか?

小学生だった時に、絵を描いたら「中垣くんの絵は、線はいいけど色をつけるとダメになっちゃうね」みたいなことを言われたことがあってそれがすごくトラウマで、絵の具のように使う度に色を作らないといけない画材に元々苦手意識があったんです。
それで大人になってイラストの仕事をすることに決めてから、何を着彩に使うか迷ったんですが、試しに2、3本買ってみたコピックチャオがすごく使いやすかったんですよね。
いつでも安定して同じ色を使えるのが自分にすごく合っていて、キャップを開けたらすぐ描けるし10分でも20分でもあればその分たくさん絵を描きたかったので、よしこれでいこう! と決めました。それからはずっとコピックを使っています。

ーコピックの色で特にお好きな色、よく使う色があれば教えてください。

パキッと仕上げたいので、鮮やかな色が好きですね。
人を塗る時はE00ですが、緑色だとG05YG41YG06、赤色だと、真っ赤というより朱色っぽいr05が好きで、いわゆる黄色だとY06Y17が特に好きです。水色を使いたい時は最近はB00、青ならB24、木の色はE33。これらはいつもよく使う色ですね。

ープロの方は色数とインク量が多いコピックスケッチを使われる方が多い印象なのですが、中垣さんはコピックチャオを愛用されているのですね。

丸い方が手にフィットするし、キャップの色の部分が大きくて見やすいから気に入っています。
人の肌の色を塗るのによく使うE00に関してはコピックスケッチを持っていますし、チャオにない色を買い足すこともあるんですけど、基本的にチャオを愛用してます。

―細かい線が密に描かれているのが特徴的ですが、主線はマルチライナーを使われているのでしょうか。

0.03と0.05の太さのコピックマルチライナーを愛用しています。細かい線をたくさん引くので、マルチライナーは箱買いしていて、ペン芯がつぶれて少し太くなったら新しいのに変えて、太くなったものは細かすぎないところに使って、というふうにしています。

ー新作の『人体ジェットコースター』について、制作の裏話などあれば聞かせてください。

今回は線画が鉛筆なんです。ラフからもう一段階クオリティあげたようなものを最終的な線画にしていて、それをモノクロデータにして業務用のコピー機で印刷したものに色をつけていきました。
いつもはイラストボードにマルチライナーでペン入れしたものに着彩しているので、今回はコピー用紙に着彩したというのもあって新鮮でした。コピーしたものに着彩できるので、気に入らなくてもすぐにやりなおしできるという点がよかったです。

―着彩にかかる時間はどのくらいですか?

コピー用紙だからか、なんかいつもより早かった気がします。全ページで10日くらいで終わりました。事前にしっかり色の構成を練っていて、色の組み合わせをラフの段階で試しておくので色選びの迷いがないというのは大きいと思います。

ービビッドな色使いというか、実際の身体をイラストで表現するときにあまり使わなそうな明るい色が入っているのが面白いです。

内臓のシーンが多いので、実際の色そのままだと同じような色の印象のページが続いてしまうので、本全体としてメリハリを作るためにわざと意識的に色が派手なページを入れたりしました。
身体のなかを描くわけだから黄色とか青はどうなんだろう? ってちょっと迷ったりはしたんですけど、これはこれで絵本らしいし、絵も引き締まるし良かったと思います。

ー作画で大変だったり印象に残っているページはありますか?

胃のページとかは最初からイメージが固まっていたんですが、口から入ってくるシーンは後から追加しました。あとは描きあがった後に、形の変更や要素の追加などをしたくて、そこだけ新しく描いたものを印刷所さんにお願いして合成してもらったりというのは何回かしました。

ー原画と本を見比べてみると、かなり色が変わっているところがあるのがわかりますね。

改めて原画を見ると結構色が明るいなと思いますね。例えば、監修の先生に「動脈と静脈の血液の色の差を、もっとはっきり出したほうが良いです」とアドバイスをいただいて、酸素量の少ない静脈の血液の部分にマゼンタとシアンを足して紫っぽく強調したりもしました。
やっぱり(特色を使わない)4色印刷だと、原画の鮮やかさまではどうしても再現できないところがあるんですが、それはそれで原画を見たときに面白さを感じていただければと思います。


『人体ジェットコースター』原画展のお知らせ

『人体ジェットコースター』(ポプラ社)

2022年3月 3日~ 3月17日の間、青山ブックセンター本店にて、『人体ジェットコースター』の原画展が開催されます。
インタビュー内でも紹介していただいた『人体ジェットコースター』は、人間型アトラクションをジェットコースターがかけめぐる、驚きながらも楽しく身体のことを学べる絵本です。
原画の鮮やかさや線の緻密さを楽しむのはもちろん、原画と作品の色の違いなどにも注目してみてください。

原画展についての詳細はこちらをご確認ください。

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