石原瞳
千葉県出身。画家を目指していた父の影響で2歳から絵を描き始める。小さい頃の夢は少女漫画家になること。
影響を受けた大好きな漫画家は手塚治虫さんと種村有菜さん。華やかで可愛い絵や、キャラクタータッチが大好き。
東京デザイナー学院卒業後、2014年、運命的にカリカチュアの世界と出会ったのち、プロ養成コースに毎週通い、2015年に念願のプロデビューを果たす。翌年2016年から一般向けやプロを育てる教室の講師に就任。2019年にクリエイティブ・ディレクターと弊社マスコットキャラクターである「CJタコパス」をデザインする。
2020年オンラインでカリカチュア世界大会のセミナー講師を務め、2021年、悲願のカリカチュア世界大会総合優勝。
カリカチュアアーティストを志したきっかけを教えてください。
小さい頃から絵を描くことが好きでした。漫画を読むのも描くのも好きで、漫画家に憧れていた時期もあります。イラストレーターになりたくてイラストの専門学校に通い、卒業後はイラストレーターを目指しながらフリーターをしていました。その頃に、絵を描く仕事に就いていないことを知った友人が「こんな面白い仕事もあるんだよ」と似顔絵業界について教えてくれたのがきっかけです。
ご友人からのご提案だったのですね。
私も似顔絵を描く仕事について興味を持ったので、ショッピングモールに似顔絵師さんのいるスポットがあるから二人で絵を描いてもらいに行ってみよう、ということで実際に描いてもらいながら色々なお話をお聞きしたんです。
その方がカリカチュア・ジャパンっていう会社では似顔絵を描けるようになるためのスクールが開講されているよと教えてくださって、調べたら「プロ養成コース」というスクールの開講がちょうど1ヶ月後にスタートするタイミングだったんです。興味を持ったので早速申し込んで、似顔絵を描くための勉強を始めました。
似顔絵のどんなところに惹かれたのでしょうか?
私は自由な発想のイラストを描きたいっていう気持ちがずっとあったので、実在する人を再現するための似顔絵は自分には難しいんじゃないかなと勝手に壁みたいなものを感じていました。
でもプロの方に描いていただいたら、思っていた似顔絵のイメージと全然違ってすごく楽しくて感動して、私もやりたいと興味を持ちました。
プロ養成コースではどんなことを学びましたか。
ライブスケッチの技術習得と、プロとしての考え方などを教わります。プロの養成講座は2ヶ月間(合計8回の授業)で結構短いんですが、その分ものすごく課題が出されて、毎週必ず100人描くという宿題がありました。初心者のうちはとにかく数を重ねるというのが大事だったと思います。
コロナ禍になった今では出来ていませんが、当時は「街中で似顔絵を描かせてくれる人を見つけて似顔絵を描いてくる」という課題もありました。元々人見知りなので、知らない人に声をかけて更に絵を描かせていただくなんてってすごく緊張ましたが、お声がけした方が優しい方で、飲み物の差し入れまでくださって……そんな人の優しさに触れた思い出もあります。
講座を受け終わった後は、どうやってカリカチュア・アーティストになるのでしょうか?
講座の最終日に、最終競技会という作品制作の場があります。そこでアーティストであり代表のKage(氏)が、入社の意思がある人を対象に、作品の出来や上達具合、アーティストとしての資質を確認し、次のステップへ進めるかどうかを判断されます。後日、更に試験を受けて、そこで合格すると晴れてカリカチュア・ジャパンのアーティストとして認められ、店舗でのデビューが決まります。
石原さんは見事1回で審査をクリアし、その後すぐ入社試験も通過しカリカチュアアーティストとしてのキャリアをスタートさせたとのことですが、特に困難だったことなどはありますか。
やっぱり似顔絵を描くうえで大事なのがお客様とのコミュニケーションなんですよね。似顔絵を描くにあたって、相手の方がリラックスできないと真顔になってしまいますし、真顔だと肝心の特徴がつかみにくいんです。
先ほども人見知りだったと話したんですが、初めての方と話すのが苦手で元々全然喋れなくて……でもそれじゃだめなので、お客様とちゃんとコミュニケーションが取れるように頑張りました。絵を描けるだけではなくて、総合的に色々な力が必要なんだなというのを痛感しましたね。
カリカチュアジャパンさんは全国各地に出店されていますが、どちらの店舗に勤めていたのですか?
だいたい半年〜1年で次のお店に異動することが多いのですが、浅草、原宿、お台場、横浜赤レンガなどの人気の観光施設が多かったです。大阪、神戸、京都など関西の店舗にも行っていました。
イベントシーズンが繁忙期になっていて、忙しい時期は50~60名くらいの人数を描いていました。
コピックは講座の中で初めて使われたのですか?
そうですね、絵を描くのは小さい頃から好きでしたし、小さい頃の夢は少女漫画家になることだったので、コピックのことは前から知っていたのですが使ったことはなかったです。漫画家さんとかプロの人が使っているってイメージで憧れの画材でした。
初めてのコピックにはどのように慣れていきましたか?
カリカチュアのスクールでは、似顔絵の主線をコピックスケッチの100を使って描いていくことを学びます。プロ養成コースの2週目に使い方を学ぶのですが、講師から丁寧に使い方のコツを教わるので割とすぐ慣れることはできました。コピックを持つ手を紙につけて、しっかりと安定したストロークを描くことから、筆圧で強弱をつける練習を行いました。課題がたくさんあったとお話ししましたが、とにかく量を描くので練習する中で自然と慣れていきます。
慣れてくると繊細な描き分けができますし、SNSで海外の方から「何の画材を使ったらこんなに綺麗な線を描けるの?」とコメントをいただくことも多いです。
コピックでカラーリングするようになったのはいつ頃からですか?
入社して半年くらい経ってから、コピックでカラーリングする似顔絵も描くようになりました。似顔絵のメニューに「プレミアム」という、主線だけでなく着彩もコピックで行う商品があるので、その対応ができるようになるために練習します。
最初は塗りムラができたり少し苦戦することもありましたが、先輩方につきっきりで教えていただけますし、独学ではコピックイラストのメイキング本を参考にしていました。濃い色を塗ってから薄い色を重ねてのばしていくと綺麗なグラデーションになるとか、ためになることも多かったです。
コピックのカラーリングを習得された先輩として、これから使ってみたいという方にアドバイスをお願いします!
やっぱり、コピックはインクが乾くのが早いのが特徴なので、カラーの時はスピーディーに塗るように意識しています。光とかハイライトに向かってはらうように塗っていくと、ムラのない綺麗な塗りができますね。
あと、コピックを使う時は紙選びがすごく大事だと思います。コピックから出ている紙も何種類か試してみました!特に個人的に好きなのは、薄いPMペーパーと、つるつるして厚みのある特選上質紙です。発色も色の塗り心地も変わるので、色々試してみてほしいですね。
コピックでよく使う定番色があれば教えてください。
人の肌を塗るときは、ほっぺや唇などにピンクを使って血色よくかわいく仕上げたいのでR22は必須ですね。肌のベースだと、E01、E02、E11、E31、E71を頻繁に使います。E71は特に暗いところの影の描き込みなどに活躍します。
昨年開催された世界大会(第30回ISCAカリカチュア世界大会)では悲願の総合優勝受賞おめでとうございました!世界大会とこれまでの経歴について教えてください。
ISCAカリカチュア世界大会は、アメリカのラスベガスで年に一度開催される似顔絵の世界大会です。世界中から約250名ものカリカチュアアーティストが参加し、4日間の競技期間の中で、自分のブース(横1.5m、縦2.5mの壁)を似顔絵で埋めていき、その似顔絵の出来で優劣を競うものです。
私は2015年に初めてカリカチュア・ジャパンの代表として出場させていただいて、出場は今回が5回目でした。経歴としては、初出場した時は何も獲れなかったのですが、2回目は総合8位、3回目は総合10位、4回目はオンラインのみの開催で総合優勝はなかったのですが部門賞をいくつかいただきました。
世界大会にコピックのカラーリングでチャレンジされたことはありますか?
2016年に出た時のカラーリングは全てコピックでした。2019年もコピックを使いましたね。エアブラシのハンドピースにコピックのインクをいれて着彩するというのを試しました。一般的なインクと違って、コピックのインクだと艶が出てキレイになるんです。好奇心が強いほうなので、画材は色々試しています。
多くの方から注目されたと思うのですが、このモザイク柄のようなイラストはどのようにして制作されているのでしょうか。
世界大会には高い画力とユニークなアイデアを持った作品が集まるので、みんなが見たときに「こう描いてるんでしょ」とわかるようなカラーリングだとなかなか評価されないと感じていて、目を引けるような一工夫したものでないと勝つのは厳しいと考えていました。
何か新しい技術をと思っていたところ、専門学校の時に制作したコラージュの課題を見つけまして、これをコンテストに取り入れてみたら面白いかな?と思って試してみたのが成功に繋がりました。趣味で集めていた本とか雑誌のページを切り刻んで、各色ごとの素材としてデジタルに取り込んで、カラーリングの際に絵にはめていきます。素材作りが本当に大変で、始めた時は一瞬後悔しました。
通常の大会は現地参加のみですが、今年はオンラインと現地参加があったそうですね。大変なこと、印象的だったことを教えてください。
世界大会は、会場でも頑張っている人や熱量が高い人が注目されやすいと感じているので、オンラインだとその頑張っている様子が伝わりづらいぶんハードルが高いだろうと思っていました。無事に受賞できて良かったです。現地にいると参加者がいるのでアドレナリンが出ているのか全然寝なくても大丈夫で、ずっと描き続けていられるんですけど、家に一人だとモチベーションを保つのが難しかったですね。ただ、存在感を少しでも出すために、SNSでは大会に参加していることを積極的に発信するように意識していました。
世界大会で優勝するという目標を叶えられましたが、今後挑戦していきたいことはありますか?
私は2016年からスクールの講師を担当していますが、2020年から拡大したコロナをきっかけに講習のオンライン化が進んだことで、海外の方へ教える機会も増えました。今後は世界中に教室を開き、多くの人と絵で繋がり、人の心を温かくするような絵を描き続けることが目標です。