Eris Tran
エリス・トランはベトナムを拠点とするフリーのファッションイラストレーターで、インスタグラムでは23万ものフォロワー数を集めています。彼の作品では、スケッチの高い技術、アーティスティックな発想、多彩で豊かな色使い、リアルにレンダリングされた素材の質感、計算された重ね塗りなど、コンセプチュアルなイラストを創作するための幅広い能力が見事に発揮されています。エリスの作品は、Elle、L'Officiel、Basic Magazine、Harper's Bazaar、Wow VietNam、Alchemist Magazineなどのメディアで取り上げられ、注目を集めています。また、Dior、Versace、Burberry、BVLGARI、Alberta Ferretti、Ralph & Russo、Iris Van Herpenなどの一流ファッション企業とイラストでのコラボレーションを行っています。
あなたの経歴やキャリアについて、少し教えてください。
学校ではマーケティングを専攻していました。講義以外では絵を描くことに時間を多くの費やし、特にファッションドローイングを熱心に描いていました。その後、これこそが真に情熱を燃やせる仕事だと気付き、生涯のキャリアとしてこの道を歩むことを決意しました。もう7年以上この分野に携わっています。
もともとはマーケティングの勉強をしていたのですね。
そうなんです。私は大学でマーケティングを4年間学び、卒業しました。しかし、在学中も卒業後も絵を描き続け、ファッションやイラストの分野でキャリアを積んできました。ファッションの学校に通ったことはなかったので、インターネットで世界中のイラストレーターから絵を学びました。
2年生になってからは、学ぶだけではなく、リサーチにも時間を割くようになりました。そして、どうすればもっとうまく描けるかを真剣に考えたのです。それが私の転機となりました。
マーケティングからファッションイラストへとキャリアを変えたとのことですが、なぜ、ファッションの分野に惹かれたのでしょうか?
大学でマーケティングを学ぶ過程で、ファッションについて調べていたのですが、有名ブランドごとにデザインやディテールが異なることにとても興味を持ち、好奇心を掻き立てられました。また、弟の結婚が決まったときには、義理の妹に着せるドレスを選ぶために、いろいろなお店を調べました。それはとても刺激的なことでした。ウエディングドレスに使われている素材、特にシルクを気に入ったのです。おそらくそれが、私がファッションイラストを描くようになったきっかけだと思います。
インスタグラムを拝見すると、ディオール、ヴェルサーチ、バーバリーなど、有名ブランドとお仕事をされていますね。ファッションイラストで経験を積むとなると10年、20年かかると思っていましたが、あなたがわずか7年でここまで有名になったのは驚きです。どうやって多くの機会を得ることができたのでしょうか?
ベトナム人にとってファッションイラストはとても新しいものなのです。ベトナムはファッションイラストの分野ではまだ発展途上の市場です。幸いなことに、私はこの分野を知って、研究とトレーニングを重ねて、絵の技術を向上させることができました。
世界中の有名ブランドがベトナムにやってきたのもそのためで、彼らはトップのファッションイラストレーターを探していたのです。私は彼らにポートフォリオを送りました。ベトナムにもファッションイラストレーターは何人かいるのですが、幸いなことに、担当者がパリなどのヨーロッパの本社にポートフォリオを送ったところ、私をベトナムのファッションイラストレーターの中でもトップレベルだと評価してくれました。それから、イベントに招待されるようになり、多くのマーケティングイベントをサポートしました。その当時、唯一認められたベトナム人のファッションイラストレーターになれたわけですから、とても嬉しかったです。ファッションデザインやファッションイラストを学ぶ私の生徒たちにとってもそれは同様だったでしょう。
学校でファッションデザインを教え始めたのはいつですか?ベトナムに自分の学校を持っているのですか?
自分の学校を運営しているわけではなく、ファッション系の専門学校で教えています。それ以外にも、パーソナルトレーニングのような形で外部の生徒にオフラインやオンラインの両方で教えています。
多くの学校で教えているのですか、それとも1つの学校だけですか?
3年前からファッション専門学校でデッサンを教えています。今もその学校で教えています。私が教鞭をとっている学校は一つだけです。
教えることになったきっかけは何ですか?
一人で長い時間をかけて調査し、研究し、描いていたので、もう本当に燃え尽きたと感じてしまったのです。そこで、学生に教えることにしました。というのも、長い間現場で自分の視点だけで研究を続けることに無理が生じてきたからです。つい主観的な見方に偏ってしまうこともありました。
しかし学生に教えることで、つまりいろんな人たちとコミュニケーションをとって交流することで、彼らが異なる視点を持っているのを実感できました。これによって参考にできるさまざまな情報源があるのを再認識できましたし、インスピレーションを得ることもできました。
教えていたときの印象的なエピソードはありますか?
私にとって、教員生活で最も思い出深いのは、教育実習を行ったときです。学校での実習を終えたとき、生徒たちから大きなプレゼントをもらいました。地元の果物やベトナムの魚醤など、私にとってとても特別なものをくれたのです。彼らの愛と配慮を感じました。受け取ったプレゼントの一つ一つに、人間の思いやりと共有を感じました。だからこそ、私は教えることを楽しんでいるのです。
様々な世界的に有名なブランドからErisさんにオファーがあったわけですが、ご自身の強みはどういうところだと思われますか?
実のところ、それは非常に難しい質問です。なぜなら、それはブランドが決定することであり、選んだ理由を彼らが教えてくれることはないからです。私の場合、ファッションイラストレーターとして、できる限りすべてのドローイングやスケッチに多くの努力と情熱を注いでいるつもりです。そのため、ドレスの素材や生地、細部に至るまでこだわります。それがブランドの要求にマッチし、課題を解決することができるのだと思います。そのおかげで、ブランドの方々の目にとまることができました。もしこの質問に答えるとしたら、私の仕事がブランドの要求にマッチしていたからだと思います。
はじめてコピックを使ったときの感想をお聞かせください。
コピックマーカーを使い始めたのは、大学3年生の時でした。まず、市場にどのようなマーカーがあるのかを知りたいと思いました。当時、コピックの存在を全く知らず、ファッションデザインの現場で使われている有名なマーカーをインスタグラムで調べてみました。すると、数あるブランドの中からコピックが多く使われていることに気づきました。当時、ベトナムにはコピックを販売しているお店が1つしかなく、色の種類も限られていたので、あまり使われていませんでした。そのため、コピックと他のブランドのマーカーを併用しなければなりませんでしたが、比較すると、コピックの色合いがとても生き生きとしていて、とても鮮やかで、本物の素材感があるなど、他のブランドとの違いを感じることができました。ドレスを描くと、ただの紙とインクではなく、まるで本物の銀のように感じられました。またコピックのパステル調の色合いもとても気に入りました。しかし、当時大学3年生だったので、コピック全色をコレクションするような余裕はなく、コピックを他ブランドのマーカーと一緒に使っていました。
コピックと他のブランドとの一番の違いは何ですか?また今ベトナムでコピックは買えるようになったのでしょうか?
コピックが他のマーカーブランドより優れている点が2つあります。第一に、マーカーの形状がとても扱いやすいことがあります。コピックを使って、絵を描いたり、スケッチをしたりすると、とてもスムーズにマーカーを動かすことができます。コピックを使っていると「気持ちいい」という感覚を得られるのです。
2つ目のポイントは、スーパーブラシのペン先です。これは本当に柔らかくて、スケッチもスムーズにできます。
今では2~3のショップがコピック製品を販売しています。色数も増え、コレクションも充実しています。しかし、私たちの期待に反して、まだまだコピックの数は少ないのが現状です。ファッションイラストでは、アーティストはさまざまな色調を使用しなければなりませんが、まだまだ不足しています。海外から直接買えるようになればいいのですが…。もちろん、以前よりもコピックを手にする機会は格段に増えています。今後、コピックをより購入しやすくなることを期待しています。
なぜ、メインの画材としてコピックマーカーを選んだのですか?
実は水彩も使っています。しかし水彩の場合、最初にたくさんのものを準備し、水を使い、混色する必要があり、時間がかかります。一方、マーカーはいつでも使用できるので、ずっと便利です。
第二に、水彩をどこにでも持ち込むわけにはいきません。 たとえば、特別な要望がない限りイベントに水彩絵の具を持参することはしません。コピックマーカーの場合は準備に時間もかからないし、インクが乾くのも早いので理想的な画材です。
一番好きなコピックの色は何ですか?
特に好きな色合いは2つあります。ブルー系の色合いと、パステル系の色合いです。というのも、ファッションイラストを描くときには、非常に透明度の高いシルクから肌が透けて見えるようなシースルー効果を出す必要があるのです。通常の場合は、同様の効果を出すために多くの色を選択する必要がありますが、コピックのパステル系の色を使用することにより、素早く簡単にこのような表現をすることができます。
デジタルで作品を作ることもあるのでしょうか?
iPadとデジタルペンを使ってデジタルで描くこともあります。でも、本物のファッションイラストレーターになるために、そして自分の感情やインスピレーションを最大限に引き出すために、コピックマーカーを使い続けています。
最後に世界中のコピックファンへのメッセージをお願いいたします。
みなさん、こんにちは。エリスです。コピックが大好きで、ファッションイラストの仕事でよく使っています。 コピックの品質は私たちに多くのことをもたらしてくれます。人々がコピック製品を楽しんで使い続けてくれることを願っています。 またこのパンデミックでも、誰もが安全に、健康でいてほしいと思います。