シャノン・ブルーク
コピック・アーティスト、コピックUSインストラクター。米、ミズーリ州出身。サバンナ・アート&デザイン大学でイラストレーションを専攻。13歳からコピックを使い始め、2019年6月カンザスにて初個展。2019年、「Gemstone (宝石)」シリーズ、2020年「Butterflies (蝶々)」シリーズ制作開始。ヴィヴィットで特徴的な色使いと高い技術力で、写実的でスタリッシュな作品を展開する。米クラフトアート画材チェーン、Michael’sのyoutubeチャンネルで、コピックオンラインクラス公開。日本ホビーショー2021では制作シリーズの作品展示と、コピックスケッチを使った「蝶々」「ダイアモンド」「Thank youカードレタリング」の3つのテーマでチュートリアル動画を公開する。
1. アーティストとして、あなたのバッググラウンドを教えてください。
アメリカのミズーリ州、パークビルで育ちました。母はとてもクリエイティブな人で、姉と私を産む前はファッション業界でキャリアを積んでいました。私は子供の頃から落書きが好きでしたが、プロのアーティストになるとは思ってもみませんでした。最初は親に絵を描くことを勧められ、その後、地元や州、国のコンクールで優勝したのです。最初にアーティストになりたいと思ったのは高校3年、16歳の時でした。サバンナ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン (SCAD) に入学し、2018年にイラストレーションで学士号を取得しました。2019年6月には、カンザスシティで初の個展を開き、私の好きな3つの道具、コピックマーカー、色鉛筆、ペンを使って、一連の作品シリーズを制作しました。
私はいつも落書きをして、絵を描いていました。最初の記憶は、6歳から8歳の頃です。私が作ったキャラクターで、ロックスターになりたがっているアライグマのリッキーが主役の漫画を描きました。リッキーは、他の動物のバンド仲間を探すため、旅に出ます。なぜリッキーを描き始めたのかはわかりませんが、ディスニーチャンネルで見たLizzie McGuireやKim Possibleのようなキャラクターに影響されていたんだと思います。子どものころから、色鉛筆やマーカーを使うのが大好きでしたが、大人になってもそれは変わりません。
2. どんなものにインスピレーションを受けますか?
学校に通う前は、絵を描いたり、本を読んだり、水泳をしていました。自分が最高に素晴らしいと思えるアーティストについて、本をたくさん読んだことが影響していると思います。チャールズ・タナ・ギブソン、 J・C・ライエンデッカー、エルテ、アントニオ・ロペスといったアーティストに魅了されました。母が大のファッション好きだったこともあり、高校のときには、ファッションイラストレーターにも憧れていました。今では、ミュシャやクリムトのような、アールヌーヴォー時代 (1895~1918年頃) のアーティストからインスピレーションを受けています。大学ではイラストレーションと歴史学を両方専攻していたので、中東や東欧で中世に作られたアートや宗教的なオブジェからも影響を受けています。
3. 最新作「Gemstone (宝石)」と「Butterflies (蝶々)」シリーズについて教えてください。
2019年末、「Gemstone (宝石)」シリーズのドローイングを始めました。描き終えるまでに1年かかりました。これまで35点もの作品を作りましたが、私のキャリアの中で制作に最も時間を要したのがこのシリーズです。コピックペーパーセレクションの画学紙と、コピック、そして色鉛筆を使用しました。1個の宝石につき、スケッチに1時間かかり、コピックで着色するに約7時間、色鉛筆で仕上げるのに約2時間、すべて完了するまで約10時間かかります。
2020年末、気分転換をしたいこともあり、何かもっとカラフルで、シンメトリーな絵、デジタルツールを使った作品が作りたくなりました。そこで「Butterflies (蝶々)」シリーズを開始します。この作品にもコピックペーパーセレクションの画学紙を使用しています。
蝶々は宝石よりもサイズが大きいので、全部で約13時間かかりました。(スケッチ1時間、コピック8時間、色鉛筆4時間)。この2つのシリーズ通してわかったのは、コピックは色鉛筆と併用すると、仕上がりが素晴らしいということです。蝶を描くとき、コピックで塗った後に、鉛筆の細かい質感を加えるとさらに美しくなりました。
いくつかコツをお話しましょう。
常に、コピックで塗った後に、色鉛筆を使用してください。逆に色鉛筆で塗った後に、その上からコピックを塗ると、鉛筆のワックスやオイルがコピックのペン先についてしまい、傷んでしまいます。
また絵は小さいサイズから始めて、徐々に大きなサイズに挑戦する方が良いと思います。いきなり広い部分を着色したり、きれいに色を混ぜるのは難しいものです。
コピックは一番明るい色から塗って、徐々に暗い色を加えると良いでしょう。私にとって、コピックは水彩のようなものです。レイヤーを追加したり、暗くしたりするのは簡単なのですが、塗り終わった後で色を取り除くのは難しいかもしれません。
デジタルツールも活用しましょう。私は標準的なオフィスプリンターとスキャナーを使って、自分が描いたイラストを高画質で保存しています。フォトショップでレタッチすることもあります。ちょっとズルいかもしれませんが、私の蝶の絵が、どうしてこんなに左右対称に見えるか不思議に思う方もいるでしょう。実は、蝶の半分だけを描いて、それをフォトショップで複製し、中心軸に沿って反転させているのです。
5. コピックを使い始めたきっかけを教えてください。
コピックを使い始めたのは、13歳のときでした。母とよくホビーロビー(アメリカのクラフト用品店)に行っていたのですが、母が生地を見ている間、私は画材売り場を見てみました。店内で、コピックは防犯用の鍵付きガラス棚に置いてあったので、これはきっと高級品に違いないと思いました。数週間後にはチャオのスキントーンセットを買って欲しいと母にせがみ買ってもらいました。高校入学後、スケッチのスケッチンググレーセットを購入し、スケッチマーカーを単品で購入して色を揃えました。高校時代は風景画や人物画に興味があり、そういったテーマを描くために、ブルー、グリーン、ブラウンの色を集めていましたね。初心者の私は他のメーカーのマーカーも持っていたのですが、インクがなくなると使えない、使い捨てのマーカーでした。母を説得できた理由は、コピックはインクが詰め替え可能で、長く使えるからです。12年前に買って以来、そのチャオとスケッチは現役で使っています。
6. コピックで好きな色は何ですか?
若い頃は一番濃い色が良いと思っていました。でも年を取るにつれて好みが変わり、V91~V 99、R 81~89、YG 91~99、BG 90~99、B 91~99のような少し地味な色が大好きになりました。コピックには358色も選択肢があり、色も鮮やかです。もし一番好きな色を選ぶとしたら、B29(ウルトラマリン)でしょうね。私は競泳選手として育ったので、ブルーが好きです。特にB 29が持っているリッチでダークでパワフルなところが大好きです。他にも、RV29 (クリムソン) 、B63 (ライト・ハイドランジア) 、BV00 (モーブ・シャドウ) がお気に入りですね。
7. アメリカでのコピックのインストラクターとしての活動について教えてください。
2019年2月、Too Corporation Americas (株式会社Tooの米国子会社)のチームとテキサス州で開催されたトレードショーで出会いました。そこでコピックとマルチライナーで描いた私のスケッチを見せたのですが、チームメンバーは私の絵に強い関心を持ってくれたのです。その後、2019年6月、ネバダ州で開催されたMacPherson's (アメリカの画材卸チェーン)のディーラー向けワークショップで、私はコピックのインストラクターとして採用され、デモを行いました。今ではToo Corporation Americasの社員になり、それ以来、アメリカのコンベンションやトレードショーでコピックの製品デモを続けています。これまでに、Michael’s(アメリカのクラフト画材チェーン)向けで、5つの製品デモ動画を作成しました。動画では、私のオリジナルイラストのカラーリングをテクニックと共にレクチャーしています。
8.コピックを使う上で必須なテクニックやコツはありますか?
唐突かもしれませんが、例え話をしましょう。ランボルギーニのような超高級車で砂利道を運転する人はいるでしょうか?おそらく、いませんよね。コピックも同様です。普通のコピー用紙に塗ってしまっては、だめだと思います。コピックは品質の高いツールだからこそ、それに相応しい紙が必要です。良い紙を選びましょう。紙の表面の品質は非常に重要です。
様々なアーティストについて、本をたくさん読んでください。雑誌、オンラインの新聞、ブログを読むのも良いでしょう。情報を収集し、気持ちを奮い立たせることは、自らビジョンを実現するのと同じくらい、アーティストにとって重要です。
ラッキーなことに、現在では本当に多くのHow toビデオがSNSで公開されています。カラーリングする際にとても参考になるので、細かいテクニックやコツを注意してみてください。特にYoutubeでは、世界中のコピックアーティストから学べますよ。
スケッチやチャオのスーパーブラシ(ペン先)を使って重ね塗りのテクニックを習得しましょう。何度も同じ色を重ねると、影を表現でき、絵に深みを出すことができます。
最初はたくさんミスをしても大丈夫です。私も使い始めは色を混ぜるのが少し苦手でした。それでも練習を重ねて、高校を卒業するころにはかなり上達したと思います。
9. 今後の活動について、夢や目標はありますか?
自分のYouTubeチャンネルを立ち上げることです。私の絵とカラーリングのプロセスを記録して、皆さんに見て頂きたいと思っています。自分にはまだできなくても、人の技術を観察するのはとても役に立ちます。
高校時代からの夢は、アメリカや世界の美術館、ギャラリーで自分の作品を展示することです。現状では、マーカー、色鉛筆、ペンなどの素材で作られた作品は、油絵のような作品と比べると尊重されていないように思えます。私は、そういった現状を変えられるアーティストになりたいと願っています。
10. 読者にメッセージをお願いします。
アイパッドやフォトショップで描くデジタル絵画が人気ですが、だからと言って、その流行を追う必要はありません。マーカーやペン、鉛筆のような伝統的な画材を使う方があなたにとって快適であれば、ぜひ続けてください。大学でアートを専攻した時、中学と高校ではデジタルばかりをやっていたので、アナログな画材を使ってもっと練習すればよかったなと思いました。自分にとって、最も使いやすい道具に忠実でありましょう。そうすれば、あなたの作品がいかに優れているか、人々は理解してくれると思います。